スマイレージ 2014.7.15武道館公演 ライブレポート ~スマイレージ第三章が始まる!~

今年の3月29日、イベントでつんく♂からサプライズ発表がなされたのは、『ひなフェス』でのスマイレージの出番中の事だった。
「ちょっと早いけど先にご褒美。もうすぐの話やけど、この夏の7月15日に武道館ライブ決めたよ!ま、正直、8000人満員にしたいところやけど、実力不足なんもわかってる。でも、ファンの皆さんの応援を信じてお応えするしかないね。」

あれから4ヶ月。とうとうこの日がやってきた。
正直、無理かと思われた8000人満員の目標も、2週間前になって達成された。このギリギリ感もなんだか彼女たちらしいといえば彼女たちらしい。

日本武道館は、単なる7~8000人規模のコンサートホールではない、一つの「聖地」として象徴的な意味を持つ会場だ。音楽業界が「いつかは武道館のステージ」を目指すようになってすでに半世紀。多くのアイドルが、バンドが、聖地の舞台を夢見て曲を生み、育て、そして消えていった。

西暦2014年、結成5年でその舞台に立つアイドルグループは、我らがスマイレージ。はたしてあの悪ガキ集団たちが、今日はどんなステージングを見せてくれるのだろうか。

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ライブレポート

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白いスポットライトの中にメンバーが1人ずつ現れ、それぞれお茶を飲む、本棚から本を選ぶ、など思い思いのパントマイムをしている。と、そこに流れ始めたのは聞き覚えのあるイントロ。スマイレージ武道館公演のオープニングは『ぁまのじゃく』が飾った。じんわりとした少年少女時代の郷愁が会場を満たしていく。

『ぁまのじゃく』は、スマイレージ4人時代の1枚目のシングルだ。事前にメンバーから「スマイレージの歴史を感じられるようなセットリストになる」と予告されていたとおり、2曲目は『夢見る15歳』で、スマイレージの歩みを踏襲していた。キラーチューンで会場のコールにも力が入ったところで、紹介VTR。アップテンポなBGMに乗せて、メンバーの顔が1人ずつ巨大モニターに映し出されて行く演出で、最高にカッコいい。

後で振り付けのYOSHIKO先生のブログにより分かった情報だが、この日のステージ照明等の演出は、チームメロンからのスタッフが手掛けていたとのこと。メロン記念日も、常々「目標は武道館」と言い続け、しかし達成できないまま活動を停止した。果たせぬ思いはこうして受け継がれている。ハロプロの歴史の積み重ねを感じさせるエピソードだ。

VTR中に衣装を変えて出てくると、新曲『嗚呼 すすきの』が披露された。ミドルテンポな四つ打ちテンポに、ウェットな歌謡曲メロディが乗る、つんく♂歌謡曲の真骨頂といった感じの曲だ。情感たっぷりに歌う田村芽実の歌声がよくマッチしている。

ここで最初のMCが入る。リーダーの和田彩花から、「今日、この日本武道館のステージで大暴れするのは、私たちスマイレージです!」と力強く宣言がなされた。

続いて『ミステリーナイト』『良い奴』と、最近のシングル曲を立て続けに披露。
ここでゲストにJuice=JuiceとBerryz工房が登場し、それぞれスマイレージに向けたメッセージを手紙で朗読し、一曲ずつ披露した。

中盤は、二期メンバー(竹内・中西・勝田・田村)の4人による『○○がんばらなくてもええねんで』で幕を開けた。ステッキを使った振付が印象的な4人時代のシングル曲だ。それを今、二期メンバーの4人が立派に歌い踊っている。「がんばらなくて」はここまで決して辿りつけなかったことだろう。

その後、和田と福田も合流し、『新・日本のすすめ 』で会場が一体化したところで、衣装の上を剥ぎ取ると、なんとその下に来ていたのはドット柄のビキニ。『ドットビキニ』だ。武道館の空気が、一気に夏の江ノ島に塗り替えられて行く。

この後、さらに二組のゲストが登場した。℃-uteとモーニング娘。’14だ。要するに、ハロプロのグループがすべて応援に駆けつけたことになる。
℃-uteは新曲の『The Power』だったが、モーニング娘。は旧曲の中から『ブレインストーミング』という選曲。メインアクトをおいて盛り上がりすぎないように、という配慮だったかもしれない。実際この日の会場にはDDや他グループメインのハロプロファンも多かったようで、モーニング娘。への声援は一際大きかった。

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ゲストライブの後は、和田と福田の初期メンバー2人で『私の心』をしっとりと歌い上げる。この2人の歌唱力、表現力の成長にもまた著しいものがあると改めて実感できる構成だった。
『あすはデートなのに、今すぐ声が聞きたい』、『ショートカット』ではバックダンサーとしてハロプロ研修生も登場し、賑やかなステージとなった。
次はやや意外な選曲として『恋にBooingブー!』が歌われ、定番の『プリーズ ミニスカ ポストウーマン!』『チョトマテクダサイ!』と立て続けに披露した後は、通常なら少しMCでインターバルを入れるタイミングで、巨大スクリーンに例の「内紛」映像が流れ始めた。噂の、「スマイレージ×プロレス」が始まる!

スマイレージ激突!

今回事前に注目されたのは、『スマイレージに内紛発生!』というプロレスの煽りV風の動画と、田村が直前にTwitterでチラ見せした武道館中央に設けられた特設リングの写真だった。
スマイレージがプロレス!? 一体どうなるのかと期待半分不安半分で当日の蓋を開けてみれば、これがまた実に完璧な演出だった。普段、スマイレージのMCはやや冗長で、「グダグダ」と評されることもあるが、アットホームなライブハウスの300人相手ならいざしらず、武道館のステージでMCがグダグダになってしまうと全体の完成度や盛り上がりにも影響してしまう。そうした不安要素を排除し、かつメンバーの休憩時間と、エンターテイメント性を両立させた、良いアイデアだったと思う。

内紛勃発!の動画

さてYoutubeのフルバージョンでは、強者・下克上・元祖の3チームがそれぞれ順番に不満をぶちまけていく内容だったが、本番ではこれらが短くトリミングされ、シャッフルして三つ巴で言い合いをするような編集になっていた。
そして入場シーンでは、3チームそれぞれが研修生二人を付き人として従えて入って来るのだが、オリジナルテーマとオリジナルガウンを着て、リングアナ(さわやか五郎)にコールされてスモークの中を入場してくるという凝りよう。
入場曲も良く出来ていて、強者チームはPRIDEのテーマ(Rage Against the Machine『Guerrilla Radio』)風、下克上チームはスタン・ハンセンのテーマ(『Sunrize』)風、そして元祖チームは赤のガウンでアントニオ猪木のテーマ(『イノキ・ボンバイエ』)風のオリジナルテーマが流れて雰囲気を盛り上げた。

入場までは完璧だったが、その後はなんと「マイクパフォーマンス」。普段のMCのようにグダグダになってしまうのではないか、一体どうなることかと見守っていると、ショートアレンジを施された楽曲を3チームが二人ずつ歌うという演出だった。ダレること無く、少人数での見せ場を作りつつ、かつ曲数も増えるという冴えたやり方に思わず膝を打った。
その後は、『ちょいとカワイイ裏番長』のアレンジBGMに乗って、殺陣風のダンスでバトルロイヤルになり、3チーム同時KOという展開に。リングアナから「最初に立ち上がったチームの勝利だ!」と告げられると、リング上に横たわる6人に降り注ぐ会場からのスマイレージコール。

全員が同時に息を吹き返し、ゆっくりと体を起こしてきたところで、『タチアガール』のメロディが流れてきた。

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落ち込んでちゃいられない
即行私は立ち上ガール
Oh yeah! こんなとこで負けなんて認めない

夢 だけじゃ生きられない
恋愛だけが全てじゃない

Oh yeah! 自慢したいMy人生
HAPPYへGO!タチアガール

ここで、あの勝田里奈が涙を見せていた。りなぷ~の目にも涙。
後でMCで語っていたが、勝田にとってこの曲は参加第一枚目のシングルということでとても思い出深いものだったらしい。

かくして内紛劇は終了した。今、スマイレージが一つになっている。

ガチでプロレスをしたわけではないし、曲名に引っ掛けて皆で立ち上がる、言ってしまえば茶番ではある。しかし、茶番と切って捨てるにはあまりに完璧な茶番だった。そうだ、スマイレージはいつだってこうして困難に打ち勝ち、即効立ち上がってきたのだ。筆者のオペラグラスのピントがぼやけて合わなくなった。

肩を組んで支え合い、立ち上がった彼女たちは、ここから怒涛の展開で会場のボルテージを上げ続ける。
『ヤッタルチャン』からの『ええか!?』で乗せた後は、会場中が待っていた『私、ちょいとカワイイ裏番長』。曲前に福田花音の煽りで「チョイカワ!チョイカワ!チョイカワ!チョイカワ!」のチュートリアルをはさみ、会場全体が地鳴りのようなチョイカワコールで一体となった。その後は縦ノリビートの『エイティーンエモーション』、初期の名曲『有頂天LOVE』でドクターストップがかかる寸前まで会場を盛り上げ、本編終了となった。

アンコール

メンバーが去ってすぐに会場から始まった「スマイレージ!」コール。それに応えてメンバーが現れると同時に、新曲『地球は今日も愛を育む』のイントロが流れ始めた。曲自体はアンビエントなEDM調でメロディも決して悪くはないのだが、初めて耳にする曲とあって会場もなかなか盛り上がりづらい。ステージ運営スタッフも新曲を挿入する箇所については頭を悩ませたことと思うが、ここがベストな位置だったかどうかは評価の別れるところだろう。

過去の亡霊に苦しんだスマイレージ

スマイレージが歩んできた道は、決して平坦ではなかった。当時のハロプロエッグから歌、ルックス共に優れた選りすぐりの精鋭を4人集めて結成され、レコード大賞新人賞を獲得する華々しいデビューを飾ったが、その後人気メンバー、歌唱メンバーが相次いで2人辞め、5人をサブメンバーとして追加投入したが、そのうち1人は体調不良で脱退した。

ファンに与えた初期人気メンバーの離脱によるショックは大きく、実力やアイドル的なルックスの面で比較される二期メンバーに対しては、ファンから必要以上に厳しい目が向けられた。

中西香菜は、最後のMCで涙ながらに語った。
「私は1人何もやっていない素人から入って、ボイストレーニングやダンスレッスンしてて追い出されちゃったこともあったし、毎日マネージャーさんに呼び出されて怒られていたけど、いっぱい怒られたからこそ強くなれたと思うし、もっともっと頑張って歌うところを増やして、かななんコールや推しジャンしてもらえるところを増やしていきたいなと思いますのでこれからもよろしくお願いします!」

勝田里奈は、より直接的に逆風について振り返った。
「私はスマイレージに二期メンバーとして入って、多分初めはファンの方でも二期メンバーを受け入れられないっていう方も沢山居たと思うんですね。でも私がしゃべると、ペンライトの色をそれぞれのメンバーカラーに変えてくれるのがすごく嬉しいなと思ってて…」

そうした過去の幻影に苦しめられてきたのは、二期メンバーだけではなかった。

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福田花音は次のように語っている。
「私は元々の4人グループのスマイレージが大好きで、メンバーが増えるって言われた時はもう頭がおかしくなるくらい動揺したし、6人になってからも4人時代が大好きだっていう気持ちが忘れきれなくて、皆になかなか馴染めなくて、そうしているうちに成長していく2期メンバーや皆を引っ張っていくリーダーを見ていると、取り残された気分、じゃないけど私どうしたらいいんだろう、「やる気がない」ってつんく♂さんとかに言われるのも「絶対私のことだ」ってすごい思ったし…。
でもそういう気持ちのままで要るのは、2期メンバーにも、リーダーにも、ファンの皆さんにも、スタッフさんにも失礼なことだなって思ったし、6人の中で役に立ちたい、必要とされる存在になりたいっていう思いに変わってから、6人のスマイレージが大大大好きになったし、今日このメンバーで武道館に来れたことが本当に幸せだなと、今は思っています。」

正直このコメントを聴き始めた時、筆者は、せっかくこうして6人でまとまって武道館公演が盛り上がっている最中に、何も「4人時代が大好き」「増員を受け入れられなかった」なんてそんな話をしなくても…、と思った。
しかし、この話は今日、この日、ここでしなくてはいけない話だったのだ。

実は、この日の会場客席には、初期メンバーの2人が駆けつけステージを見守っていた。福田の言葉の前段は親友に向けたメッセージ、4人で過ごした大切な日々を忘れてはいない、というメッセージだったのだろうと思われる。

そしてまたそれは、同時に福田からの過去への決別宣言でもあったのだ。

スマイレージ第三章

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最後は、もちろん『スキちゃん』。客電もついて会場全体が明るくなり、一体感と幸福感に包まれてスマイレージのステージは終了した。

普段、ライブハウスの狭いステージでしかライブをしていないスマイレージが、武道館の広いステージでどうなるのか、そんな事前の心配は完全に杞憂に終わった。この日、武道館を縦横無尽に駆け巡り、あやちょの宣言通り「大暴れ」した6人のヤッタルチャンは、武道館のステージでも収まりきらないくらいのポテンシャルとエナジーを発していた。その実力とスケールに人気とセールスが追いつき、ホールツアーを敢行する日もそう遠くはない、そう予感させる充実のステージだった。

4人時代のスマイレージが「第一章」だったとしたら、武道館公演を成功させた今日この日までが「第二章」だった。
そして数々の困難を乗り越え、共に立ち上がり、グループとして真の結束を確立した今日からが、スマイレージ第三章の始まりである。

物語は、続く!

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“スマイレージ 2014.7.15武道館公演 ライブレポート ~スマイレージ第三章が始まる!~” への5件のフィードバック

  1. avatar アライブ名無しさん より:

    スマイレージにはあまり興味なかったんですけど、今回は晴れ舞台ということで、関西から初遠征しました。
    今か今かと開演を待ちわびていると暗転し、会場は色とりどりのサイリウムでいっぱいに。
    この時点で潤んでくる私の涙腺。
    OPが始まってメンバー登場、そして流れるぁまのじゃくのイントロ…
    ここで涙腺崩壊ですよ。
    まぁ泣いたのはこれきりで、あとはオイオイ言ったり小さくフリコピしたり、思いっきり楽しみました。

    他グループのゲスト出演については色々な意見がありますよね。
    この記事では

    >気負いもある中ではスマイレージの休憩時間を挟まないと2時間の長丁場は持たなかったのではないかと思われる。

    ということでゲスト出演を肯定しているような形ですが、私も同意です。
    実際めいめいは酸欠?で一時裏に引いてますから。
    あそこまで盛り上がったのは、極力MCと休憩時間を削ったセトリのおかげでもあるかも。

    誰かが言ってたんですが、この武道館ライブのセトリはシングルを中心に披露した まさに『ベスト盤』といえそうな物でしたね。
    新規やDDでも盛り上がれるよう配慮してくれたのかもしれません。

    なんにせよ、物語は続く。スマイレージの第三章に期待です!

  2. avatar アライブ名無しさん より:

    和田彩花こそハロプロを引っ張っていくリーダーなのかもしれませんね
    弥勒菩薩のような優しさと、不動明王みたいな強さを持っている

  3. avatar アライブ名無しさん より:

    アンコールの1曲目は「夕暮れ」や「君チャリ」のようなしっとり系の曲がくればな~と私も思いました。誰も聞いたことがない新曲だったので、会場全体が当惑気味だったですね。

  4. avatar アライブ名無しさん より:

    プロレス劇かと思わえせておいて、実はメドレーとダンスパフォーマンスからのタチアガールに持っていく展開は、アイドルとして正しいパフォーマンスだと思いました

    「歌とダンスで魅せる」
    スマイレージはこれができる力を持っていることが確認できた武道館でした

  5. avatar 西村英嗣 より:

    スマイレージの皆さん,武道館お疲れさまでした

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