揺れた心の幅だけ「物語は続く」 アンジュルム 福田花音 卒業のその先へ

表題は、スマイレージの楽曲『プリーズ ミニスカ ポストウーマン!』のラストの歌詞より。

福田花音さんのことにコメントするにあたって、「物語は続く」という歌詞がふさわしいと考えたからです。

すでにこちらでもニュースとして取り上げられているとおり、ハロ!ステにて、アンジュルムの福田花音さんが、今秋、アンジュルムとハロー!プロジェクトから卒業することが発表されました。
つい先日、新人さんたちのお披露目イベントで、ハロプロの今後に明るい展望を見ていたというのに、さすがファンの気持ちを揺さぶる点でも、ハロプロはいっこも油断なりませんね。
しかし、私はこれをかなり画期的なことだと考えています。

下記、あたかも福田花音さんの卒業を歓迎するかのように受け止められかねない内容ですが、決してその意図はありません。

率先して先陣を切った福田花音

新人さんたちが本格的な活動を始めて、ハロプロ全体に明るい展望が見えてきたというだけではありません。
卒業発表の当のハロ!ステで、大事なお知らせの前に挿入されていた『大器晩成』のライブ映像にも明らかなように、今、メンバーの増員を経て、必殺のキラーチューンを得て、アンジュルム自体が、まさにこれから打って出ようというこの時期にどうして…?という戸惑いは、多くのファンが抱いた気持ちではないかと思います。

事実、福田花音さんの卒業発表について、さまざまな憶測が出ています。
しかし、そうした憶測はともかく、繰り返し、私はこれをかなり画期的なことだと見なしています。
というのも、モーニング娘。以外のグループにおいて、はっきり当人の意思として「卒業」を告知したのは、この福田花音さんの例が、ほとんど初めてのことだからです。
諸々の事情から(※ 詳しくは書きたくないんですが、ご理解いただけるものと思います)、事後的に「卒業」とされたメンバーは、いくつかのグループについて、何名か名前を挙げることはできますが、そうした事情なくして、当人の意思として、事前にきちんと告知して卒業するメンバーとしては、モーニング娘。以外では、これがほとんど初めてのことです。

Berryz工房の活動停止については、誰かの卒業という形ではなく、グループ全体の一旦停止という形ですし、過去にメロン記念日など、例がなかったわけではありません。

モーニング娘。においては、新メンバーの加入と先輩メンバーの卒業ということがグループの形としてビルドインされています。ですから、個々のメンバーの卒業は、それぞれに衝撃であったとしても(未だに道重さんを待ち続けている人もいますけど:誰だか知りませんが)、どこか「そういうもの」として受け止められる部分があったりします。
そして、実はハロプロのグループにおいて、「メンバーの卒業」というのが明示的に表に出されていたのは、モーニング娘。だけでした。

結果的に卒業ということになってしまった場合をのぞいて、はっきりと当人の意志として、当人の口から、しかも「その日」までに一定の猶予を残して、メンバーの卒業が宣告されたのは(Berryz工房の石村舞波さんなど極少数の例をのぞいて)、モーニング娘。以外のハロプロにおいては、福田花音さんの例をもって、これがほとんど最初の例となります。

このことは大きな意味を持つと思います。

後輩の視点から

以前にも書きましたが、アイドルをやっていくことはたいへんなことだと思います。
そこで書いたアイドルそれ自体の厳しさの他にも、学業との両立のたいへんさ、普通の女性である部分との折り合いの付け方など、独特のしんどさ、厳しさがあるでしょう。
また、いざ卒業してみて、歌とダンスとステージが生活の中から抜け落ちてみると、同世代に比べて、自分に常識がないことや出来てしかるべきことが出来ないことに気後れを感じるとも、「卒業」した先輩たちの何人かは述べています。切符の買い方もしらない、と。
そうであったとしても何ら気後れすることはないよとファンとしては声援を送りたい気持ちですが、当人としてみれば、自分のアイドル以降について不安になることも多いのでしょう。

今、ハロプロには、多くの後輩たちが新たに参加してきています。
まだ、上述のような不安も感じることなく、ただ自分がつかんだチャンスを、チャンスではなく必然だったと言わしめるべく、懸命にステージに挑み続けるばかりの若い後輩たちが。

こうした後輩たちの前に、「卒業」そして「その後」を、身を持って示すことは、格好のロール・モデルを提示することになるだけではなく、いつの日にか、後輩たちが自らのことして上述のような不安を感じた時には、必要以上に不安がらないでいられるための一筋の光明になるのではないでしょうか。

ステージに立ち続ける者の視点から

ステージに立ち続ける者にとっても、同じようにステージに専心していた仲間の誰かが卒業していくことは、ひとつのモデルを示してくれます。

自分にとっての一つの選択肢として懐にしまいこんでおくだけではなく、自らが日々挑み続けているステージを、そのステージへ向かう自分の気持ちを、改めて受け止めなおすきっかけとして。

福田花音さんの卒業発表にあたって、Berryz工房メンバーの何名かは「花音がその結論を出すまでに悩んだことは、自分たちもそうだったから、よくわかる(趣旨)」といった言葉を残してくれています。
自身のアイドル以降について同じように不安を感じているということだけではなく、多くのメンバーは、自分がこんなにも憧れ、こんなにも望み、かくも愛し、自分を育ててくれたステージを、自ら去るという選択をするまでの葛藤の多くを共有しているでしょう。そうした葛藤を擬似的に体験するところから、改めてステージへ向き合う自分の気持ちを再認識することもあるでしょう。

「アイドル」という立場に、今しばらくは踏みとどまる者たちにとっても、福田花音さんの選択は、大事なものを残してくれたのではないかと思います。

アンジュルムの他のメンバーにとっても

後輩にとっては、先々の不安を和らげるロール・モデルを、ステージに残る者にとっては、改めてステージへ向かう自分の気持ちを再認識する機会を与えてくれる「卒業」という選択。
それでも、アンジュルムのメンバーにとっては、それだけではありません。

福田花音さんは、自身の卒業をファンに向けて語る中で、アンジュルムの後輩メンバーたちについて、次のような発言を残しています。
曰く、3期メンバーの勢いは、グループに大きな力をもたらしてくれた、と。
曰く、2期メンバーも頼もしくなってきた、と。
曰く、だから、このメンバーなら大丈夫だと思えた、と。
福田花音さんのこの言葉は、アンジュルムの後輩メンバーにとって、とても大きな自信を与えてくれるものでしょう。

そして、こうしたことに加え、はっきりした選択を下すまでの葛藤やあれこれを、エッグ時代からの歩みを共にした同志でもあり、厳しい時期を一緒にくぐり抜けてきたリーダーである和田彩花さんと、語り合っていなかったはずは、ありません。
その上で、あやちょは、こう述べています。
曰く、「私は大丈夫。まだまだ、あの子たちの面倒をみてあげなきゃいけないから(趣旨)」と。

多くの人の傷跡に触れかねず、なかなか正面から言及できなかったことが、スマイレージ改めアンジュルムの歴史にはありました。あの時期のメンバー増員についても(上述のように、モーニング娘。と違って明示的にグループの仕組みとして公にされていたわけでもなかったことも影響して)正面から語ろうとするとモヤっとしかねないのでスルー、といった態度が混じっていないとも言い切れないものがあったように思います(婉曲すぎ?)。
それらのすべては、ここへ来ての福田花音さんとリーダー和田彩花さんの、その正面から言及できなかったことを全部受け止めてきた最古参の二人からの、こうした言葉によって、今こそ、払拭されました。今はっきりと、現メンバーたちが、スマイレージからのグループの歴史を背負っていくことに、なんの留保も、補足も、衒いも、躊躇も、必要なくなりました。

そして、もしかしたらファンの視点からも

Berryz工房は、活動停止間際の「有明Berryz祭り」にて物販されたDマガにおいて、思わず真剣に語ってしまったものか、次のような内容のことを話してくれています(複数メンバー)。

「どうせ、いつかくる終わりならば、グズグズとなし崩しに終わるよりは、勢いのあるところで、スパっときれいに終わりたい」と。

そうですね。ファンとしては異論のあるところかとも思います。それでも、その異論を受け入れたとしても、ゆっくりと勢いを失って、ほんとうにグズグズになって、「あれ、まだやってたんだ」といった感想が漏れるようになったならば、やっぱり「こうなる前になんとかならなかったのか」という声も出てきそうではあります。投稿者自身、このあたり、自分がどういう感想を持つか自信のないところです。

むしろ、誰もが残念に思う段階で、鮮烈な印象をこそ残して、ファンの心に惜しむ気持ちを沸き立たせて、それで終わりを刻印してくれるからこそ、ファンの心で永遠になるという側面は、確実にあります。

はっきり自らの口で「卒業」を宣告し、それまでの時間をともに過ごそうと当人からお知らせされることは、ファンにとってこそ福音なのかもしれません。

*****

ハロ!ステのお知らせでは、自分がしゃべっていることに対して、福田花音さん本人が、どこかで聞いたようなセリフである旨、発言していました。
卒業にあたって自らの気持ちを述べる言葉が、どこかで聞いたようなものとなること。それはむしろ、上述したような厳しさと葛藤が多くのメンバーに共有されていることの証であるように私は思います。
そうであれば、上述のような様々な影響や効果もまた、福田花音さん自身によって、ある程度は意識されていることなのではないかとも思うのです。

そして「物語は続く」

そして、やっぱり、この「卒業」を画期として、福田花音さんの物語が停止してしまうことはありません。

後輩たちがステージで輝けば輝くほど、同じようにそのステージを先輩から受け取り、後輩へと受け渡してくれた偉大な先輩の一人である福田花音さんのことが忘れられることはありません。ステージに立ち続けるものがパフォーマンスを続ければそれだけ、その傍らに、常に福田花音さんは重ねられることになるでしょう。

ましてやアンジュルムにおいては、躍進すればそれだけ、この激しく勢いのあるステージには、かつて福田花音が立っていたのだということは、ますます特筆されることでしょう。
そしてファンは、こうした多重な視線をもって、どこの現場で誰がパフォーマンスしていても、シンデレラの産まれ変わりならぬ「まろ」こと、福田花音さんのことを忘れることはありません。

後輩のパフォーマンスと共に、ファンの視線と共に、物語は続いていきます。
そしてさらに、当の福田花音さん自身が、こう述べています。

今後のことにつきましては近日中にお知らせできる予定です、と。
今、話し合っているところだけど、はやくみなさんにお知らせしたい、と。

*****

少し前であれば、「卒業」の響きに、しばらくは愕然としてしまい、他のグループに対してもいろいろと動揺してしまって、気持ちの中だけで慌ただしく右往左往することになってしまったかもしれません。
でも、私たちは今、Berryz工房の事例を通じて、ほんとうに「その先」も物語は続いていくことを学んでいます。

たんなる気休めや、口当たりの良い事だけを言って安心するためや、建前をなぞって落ち着くためではなく、ほんとうに、間違いなく、大きな区切りを超えて、その先も続く物語の実例を知っています。
メンバーでありながら、そこらのヲタよりはるかに濃いハロヲタであった福田花音さんらしい、その先の物語を、ハロヲタの一人として、楽しみに待ちたいと思います。

(文=kogonil)

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“揺れた心の幅だけ「物語は続く」 アンジュルム 福田花音 卒業のその先へ” への2件のフィードバック

  1. avatar 匿名 より:

    ゆうかりんは?
    キッズの中にもいるが?

  2. avatar 匿名 より:

    ℃-uteの梅さんを忘れちゃいけねぇぜ。

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