今こそ「めざせ!! アイドル世界遺産」の復活を!

2012年の夏、私は新宿のCDショップにいた。お目当てはBerryz工房のシングルCD「cha cha SING」である。CDをすぐに見つけ手に取ると、小さな丸いシールにはこう書いてあった。

「めざせ!! アイドル世界遺産」

これを最初に見たときに持った感想は今でも鮮明に覚えている。「なかなかインパクトのあるキャッチコピーでおもしろい。けど世界遺産はさすがに・・・笑。」結局私はそのCDを購入し、店を後にした。そのときは、それだけで、特に気にも留めなかった。

それから約二年半。先日同じCDショップに立ち寄ったことがきっかけで、当時は貼ってあった小さな丸いシールとあのキャッチコピーのことを思い出した。「最近見ていないような・・・。今もあるのかな」と、Hello!Project関連のCDで確認する。案の定見当たらない。調べてみると、思い出した。あのキャッチコピーはHello!Projectの15周年用のキャッチコピーであった。それと同時に、このキャッチコピーはすばらしいと思い、この記事を書くに至った。

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「めざせ!! アイドル世界遺産」のインパクトを強烈にしているのは、何であろうか?

まず字面がすごい。ひらがな→カタカナ→漢字(しかも四字熟語!!!)のたたみかけである。文字でありながらまさに目に飛び込んでくるようなインパクトは最大の武器である。もちろん、キャッチコピーである以上、言葉である。言葉の持つ意味を以てして、ひねりをきかせ読む者にインパクトを与えるものである。

意味も、もっともっとすごい。先にタネ明かしをしてしまおう。実はこのキャッチコピー、つんく♂イズムの塊である。意味を考えてみると、ハロヲタならだれもが知っている、うげっとなるような、懐かしいようなあの感情に襲われる。

Hello!Projectの楽曲およびつんく♂氏の歌詞においては、日常的なものを引き合いに出してスケールの大きなものを語るという展開がよくつかわれる。「お寿司と幸せ」、「コップと愛」、そして「泣いちゃった 腹減ったと地球」といったふうである。ここでも同じ構図が見てとれる。

「アイドルと世界遺産」の対比。

「アイドル」という俗っぽいものと、「世界遺産」という人類の歩みと地球の歴史を今に伝える貴重な財産。この二つを対比しつつ、一つのキャッチコピーに中にまとめ上げる。そして、このキャッチコピーは、15周年という節目はHello!Projectが世界遺産に近づいていく過程である、とも言っているのだ!これがつんく♂イズムである!

私の勉強不足であればご指摘を願いたいが、これまでのHello!Projectの歴史で、何か一つのグループや楽曲ではなく、Hello!Project全体に対してこうしたキャッチコピーが与えられたことはあっただろうか。私の知る限りはこれが唯一であるが、少なくともこれ以降はなかったように思える。こういうものが一つあるとハロプロを知らない人にズバッと説明できるし、つんく♂イズムの独特の“ノリ”も伝えやすい。

とにかく、このキャッチコピーは見事にHello!Projectをアイデンティファイする。そして個人的に大のお気に入りである。

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ところで、私はアイドルは俗っぽいと書いた。これは私の意見ではない。ハロヲタである私が持ち合わせる一般的な感覚から推測した結果である。私の考える頭の中のつんく♂さんはそれでいいと考える。いや、むしろそのほうがいいのかもしれない。そこには私が今まで気づいていなかったつんく♂さんの考え方があるのだろう。

つんく♂さんは誰よりも早く“俗”である強さに気付いていたのではないか。

一般的には、Hello!Projectはカルチャーの概念を大雑把に二分すると、サブカルチャーに分類されるだろう。サブカルチャーの特徴は、圧倒的な分かりやすさとアクセスのしやすさにある。それだけに「サクッと世界にはばたく」ことができるのだ。具体的にいえば、youtubeで観れるMorning Musume。の○○のダンスがかっこいい!ということだ。

サブカルチャーと言われるとメインカルチャーに劣るイメージを拭いきれないが、こればかりは名前が悪い。中身はどちらも立派で文化としては対等だ。加えて、繰り返しになるがサブカルチャーは“俗”である強さも併せ持つ。

今世界で起こっている悲惨なニュースが毎日のように報道されている。その原因となる漠然とした不安や社会に対する不満を持つ人々の受け皿になることができる。この点において比較すれば「サクッと世界にはばたくことができる」サブカルチャーは大きな優位性があることをつんく♂さんは見越していたのだろう。何とも恐ろしい。

2014年はベリキューのフランス公演や娘。のNY公演も成功裏に終わり世界進出という意味でも、飛躍の年であった。これで世界遺産にまた一歩近づいた。私たちが思っているよりも遥かに冷静にかつ計画的に、「この地球の平和を本気で願っている」のだ。

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少し重めな内容になったが、まとめにかかる。

私の意見としては、何かHello!Projectといえばコレ!というキャッチコピーがあるといいのではないか?そして、私はこの「めざせ!!アイドル世界遺産」のキャッチコピーをこれからも使い続ければよいのではないか?という提案をしたい。世間からしたら、何を言ってるんだと思われがちだろう。でもハロヲタなら、「デカイこと言っときゃエエねん!目指すは無料(タダ)や!」と言うつんく♂さんを想像し、そんな批判を突っぱねるのは簡単だ。

ふと思ったのだがこんなすばらしいキャッチコピー、いったい誰が考えたのだろうか。天才の超一流コピーライターだろうか、と考えたりもしたが、結局私はつんく♂さんのアイデアだと思う。仮にそうじゃなかったとしてもうれしい。なぜなら、これを考えた誰かにも確かにつんく♂イズムが継承されているのが明らかだからである。

最後に、18年前にはすでに自分の持つ強みをはっきり理解したうえで世界に発信する青写真を描いていたつんく♂さんこう言いたい。

つんく♂さん、あんたやっぱりすげぇよ!

そして

つんく♂さんの書く歌が大好きです!焦らずに元気になって戻ってきて下さい!

(文=プウク人形劇場)

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“今こそ「めざせ!! アイドル世界遺産」の復活を!” への1件のコメント

  1. avatar アライブ名無しさん より:

    世界遺産だと、まるっきりコンテンポラリーでなくなってしまったかのように響くので個人的にはあまりいい感じがしないけど、一つの論としては楽しく読めました。

    今年のハロプロは今の所、つんく♂氏以外のクリエーターによる楽曲ばかりですが、やはりつんくイズムがないと物足りなくもあるので、母校近大の入学式をプロデュースするらしいですし、ハロのプロデューサーとしても第一線に早く復帰して欲しいです。

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