2014年10月18日(土)、神奈川県のハーモニーホール座間において、Berryz工房の秋ツアーがスタートした。
Berryz工房が秋ツアーを敢行するのは、なんと4年ぶりとなる。
私は、言うまでもないことだが、18、19日と、このステージに参加してきた。
基本的にモーニングのステージやイベントでは、仲良くなったヲタ仲間と現地で合流できることが多いけれど、このBerryzの現場にはボッチで参加したことをお断りしておく。座間って遠いよね。
ロマンスを語って/永久(とわ)の歌 (初回生産限定盤A)
価格:¥ 1,456
レーベル: アップフロントワークス
発売日:2014/11/12
Berryz工房4年ぶりの秋ツアーの名に恥じぬ、徹底的に楽しいステージだったが、同時に、どうしようもなく切ないステージだった。そして、この切なさこそが本質なのではないかと思ったので、そのことを。
楽しさにあふれたステージ
Berryz工房の秋ツアーのステージは、ほんとうに芯から楽しさにあふれたものだった。
客席の私たちを楽しませるだけじゃなく、自分たちが率先してステージを楽しんでいる、その様がセトリとライブ構成の隅々にまで行き渡った楽しすぎるステージだった。
どんだけ楽しかったかを詳述しはじめると、きっとテキストが大きすぎるとか叱られるので、以下、印象深かった点を箇条書きで。
- 衣装が全部で5着かな(オープニング/私服風/コート風/コート風の衣装を脱いだ黒のアンダーウェア風/アンコールのコケティシュでキュートなアイドル全開風)?
オープニング衣装と私服風衣装のキャプテン佐紀ちゃんの可愛さ、私服風の雅ちゃんの雰囲気、私服風の熊井ちゃんの美しさ・・・筆舌に尽くしがたい。 - みんなダンスも歌も上手いけれど(いずれ、Berryzのステージングのレベルの高さについては書いてみたい)、今般のツアーでは熊井ちゃんが強い印象をのこしてる。しっとり落ち着いた「サヨナラ ウソつきの私」(秋ツアー用の特別アレンジ版)から「君の友達」にかけての熊井ちゃんのダンスは、芸術的な舞踊を見ているようで、ほんとうに美しかった。
- 佐紀ちゃんは小動物のようで可愛いし、梨沙子さんはお人形さんのようだが、熊井ちゃんは、なんか彫像というか彫刻のようで、見惚れる。ほんとに美しい。(しつこい?)
思うに、この「美しさ」は、きっとルックスではない。たたずまいが、美しい。 - 18日夜公演ラストMC、初日なので気合いをいれた嗣永さん、ももち結びがカットしたばかりであるとご報告。「みなさん、わかりますよね?」に、会場全体が薄い反応で、期待通りのスカしが入る。
嗣永さんのスカされを受け、「初日なので気合いをいれて」にのっかり、髪を暗めの紫に染めたという梨沙子さん。「みなさん、わかりますよね?」に、会場全体が揺れんばかりの大歓声。
自分がスカされたテーマにのっかった梨沙子さんが大ウケしたことに対し、「でたよ、この流れ」と腐る嗣永プロ、梨沙子さんのMC終わりにテキトーに拍手して、雅ちゃんから「雑!」と叱られるの巻♪ - 19日の夜公演、須藤さんと千奈美ちゃんが「Loving you too much」をやってくれて、私はもう思い残すことはない。
- 千奈美ちゃんが、めっちゃ楽しそう♪
- 19日昼公演のMCの茉麻。街中で声をかけられて握手する際、頭の中で「1080円っと♪」とか思っているらしい。
- 19日夜公演では、バスツアー前日のプライベートでの夢の国の話し。千奈美ちゃんの話題が出るや(MCには千奈美ちゃんはいない)、「ちなみ!ちなみ!」とコールを始めてしまった千奈美ちゃんファンに、佐紀ちゃんと嗣永プロが「うるさい!」と一喝して会場が大拍手♪
- 梨沙子さんのメインの歌割りの後、会場の「りさこ」コールがものすごく、その、過去最大級の「りさこ」コールを受けて、にっこりする梨沙子さんがスクリーンに抜かれる。これがまた、菅谷さん史上最愛の笑顔。従って人類史上、上から5位以内には間違いなく入っている極上の笑顔。
- アンコールあけの一曲目が、どうやら回変わりらしく、19日昼は「世の中薔薇色」、夜は「ハピネス幸福歓迎」という、なんという俺得な選曲。
- 夜公演後に握手会が開催された。
新曲の予約をした人に握手券を配布する形で、ライブ後の握手会が。
チケット入手済につきネットでの情報収集を怠り、さらに物販を済ませてから入場したので入場後の物販会場をスルーしたため、18日は、私はこれに気づけず、夜公演後「握手会に参加される方は~~」とのアナウンスに仰天し、案内していた会場スタッフさんをものすごい勢いで問い詰めまくって事情を把握(申し訳なかった)。
19日は無事に握手会に参加できたと云う。 - ライブ終わりで疲れているのに、にこやかに握手してくれたメンバーは、みんな、ほんとうに言葉にできないくらい輝いていた。可愛かったし綺麗だったけど、なんかそんな言葉じゃ足りないですね。みんな、やさしかったよ。心折られないから大丈夫!
- 雅ちゃんに握手の距離で目を見られると、きわめて危険。人生レベルで危険。
- Berryz工房と握手をするのは初めてではないというのに、いつも「握手してくれた」という、そのことだけで胸がいっぱいになって、小学生のようにスキップしながら帰る。(私は、かなりのおっさん。念のため)
このように、この5年で一番の克己心を発揮して、ごく少数の印象深い点にとどめたけれども、ほんとうに、開場前から帰路にいたるまで、楽しさと嬉しさにあふれた、すばらしいライブだった。
けれども、今般の秋ツアーは、楽しいからこそ、すばらしいからこそ、極上のライブ体験だからこその、そこはかとない切なさが、常につきまとっている。
あちこちに散りばめられた惜別のフック
楽しいからこそ、常に切なさがつきまとっていた秋ツアーのステージ。
これは、必ずしもこちらが「活動停止」の一件で感傷的になり深読みをしているからというだけではない。明らかに演出上、Berryz工房への惜別のフックがちりばめられているのだ。
- このツアーで初お披露目となる新曲「永久(とわ)の歌」。
アップテンポで楽しい曲調なのに、歌詞は、Berryz工房が将来から現在に向けて思い出を語っているような内容で、油断していると耐えられず醜態をさらすことになる。18日の公演で油断していたことは秘密。 - アンコールあけの一曲目が回変わりであることは前述のとおり。
他にも、私服風の衣装のときに、メンバーが何人かの組み合わせで入れ替わりながら歌う場面も、一部、回変わり(こちらは完全に公演毎に全部違うのかはまだわからないけれど)。
これは、とても嬉しいのだけど、この秋ツアーで出し切るぞみたいな感じも見えていて、少し寂しい(当エントリーの末尾参照) - 参加した人は、なぜ楽しかった項目に加えていないのか不思議に思う方もいるだろうインサートVTR。
オープニングと、ライブ途中、部分部分でインサートされる「おふざけ」VTR。ネタバレになるので、内容は書かないが、これがテレビ番組の「プロフェッショナル仕事の流儀」を模した作りになっており、たいへんに泣かせるものだった。 - インサートVTR。オープニングのものでは、10年目を迎えての「活動停止」を真正面から取り扱っている。メンバーもスタッフも、わかって作っている。
- このインサートVTRは、基本は「おふざけ」VTRとして作られている、しかし、「おふざけ」の内容も、「おふざけ」として作られているということそれ自体も、Berryz工房のあれこれを踏まえた作られ方をしていて、まっすぐ「あはは」とは見れないし、そのように作られている。
- アンコールもすべて終えた直後に、インサートVTRのエンディングが流される。
「あなたにとってBerryz工房とは?」という問いにメンバーが答えるものだが、ネタバレになるから内容は書かないと言いつつ、千奈美ちゃんのものだけは書かせて欲しい。その問いに答えて千奈美ちゃん曰く「夢の途中」。
こうして、オープニングからエンディングまで、随所に、適切に、Berryz工房への愛惜の念を惹起するようなギミックや演出が加えられている。こちらが勇み足で余計な深読みをしているからそうなのではなく、明らかに、それが狙われている。
このように、随所でBerryz工房への惜別の想いが掻き立てられるからこそ、目の前の楽しさが貴重で、愛惜しく、大切なかけがえのないものだと理解できるという仕掛けで、これは率直に見事だと思う。
琴線に触れる「おふざけ」
Berryz工房は、気合の入った「おふざけ」で名高い。
ひなフェス連動で企画されたハロプロのグループ間競合のテーマ写真集対決で優勝をさらった際も、おふざけ女子がテーマだった。時にスタッフの制止さえはねのけて企画ゲームに熱中する様子などは、Dマガの名作として、世評も高い。
先般行われたバスツアー(もちろん、参加♪)のライブのMCでは、須藤さんが「モーニングのフォーメンションダンスとか、℃-uteのパフォーマンスだとか有名ですけど、ふざけて絵になるのはBerryzだけだ」と誇り高く宣言してもいる。
(そのように、ふざけて絵になるのは、基礎のステージ技術が高いからだと私は思うが)
昨年の武道館では、思い出の写真(「がんばっちゃえ」当時のフィッティング映像)を半目の茉麻でオトすという荒業を見せ、その武道館での研修生との絡みを受けて、2014年の春ツアーでは、研修生に扮した「おふざけ」VTRが流れもした。
そう、Berryz工房は、気合の入った「おふざけ」で名高い。
この秋ツアーのインサートVTRも、基調は、こうした「おふざけ」路線を踏襲したものだ。しかし、この「おふざけ」が、いつにも増して、こちらの琴線に触れる。
というのも(内容に触れないように伝えるのは困難だけれども)このVTRが、Berryz工房のあれこれを踏まえて初めて笑える複雑な作りになっているからだ。
千奈美ちゃんが「夢の途中」と答えているように、VTRの内容そのものは、実は真面目に作られている。しかし、内容面で真面目な中にあちこちに配置されるおふざけ要素も、その真面目な内容をおふざけテイストでくるんで提示していること自体も、つまり、ネタも、そのネタを提示する枠組み自体も、Berryz工房が「おふざけ」大好きな超個性派ぞろいであるということや、Berryz工房がこれまでに残してきた様々な足跡を、踏まえた上で作られている。
Berryz工房とファンが共有しているいろんな文脈を踏まえて初めて笑える。それが前提にされて、このインサートVTRが作られている。
(内容を書かないのは、ほんまに厳しいけれども)場面ごとの細かい「おふざけ」のあれこれに、いろんなものが含意されていて、踏まえられている文脈を共有する者は、いろんなものを、あのときのあのメンバーを、あのときのあの場面を、いろいろ想起せざるを得ないものになっている。
そして、何よりも、そんな具合に、目の前で展開する具体的な一場面が、実はあれこれの様々な前提を置いたうえで提示されていること、そのこと自体がBerryz工房そのものであるということも、さらにその上に重ねられている。今、目の前に屹立して圧倒的なパフォーマンスを見せてくれているメンバーは、12年の選択と研鑽と、逡巡と苦悩と汗と涙と笑顔とおふざけを経て、今ここに立っているということ。
いろんな文脈を前提にした複雑な鑑賞を要求する、そのこと自体がBerryz工房の魅力の一部であること。
具体的な「おふざけ」に「あはは」と笑いながら、いろんなものを思い出してしまって心が揺さぶられるような、明らかに狙われたVTR構成。この琴線に触れる「おふざけ」VTRこそ、このライブに仕掛けられた切ない演出のメインといえるだろう。
むしろ、ど正面から泣かせに来るならば、こうまで切なさを感じなくとも済んだかもしれない。
世界で一番大切な人
そう、ど正面から泣かせにかかってくるならば、むしろ泣かないのかも知れない。
たとえば。
私が今般のライブで、最も強烈な印象を受けたのは『世界で一番大切な人』だった。(醜態を晒したかどうかは秘密)
メンバーみんなが思い思いの個性を際立たせる私服風の衣装でコミカルなダンスを全力で踊っているところ(とくに熊井ちゃんと雅ちゃんが必見)、このツアー用に特別にアレンジされた「サヨナラ ウソつきな私」からの落ち着いたバラード調で2曲続いた後に転調して楽しさマックスであるところ、そして千奈美ちゃんが(ダンスのフリ幅も大きく)めっちゃ楽しそうなところ・・・
ただただ楽しいというだけのものに見えるかもしれないが、そして事実、めっちゃ楽しかったのだが、これがまた非常に切なかった。先に述べたような、あちこちに散りばめられた惜別のフックではなく(もちろん、そちらでも十分に心をやられるけれど)、楽しさ全開であるはずのコミカルな基調の『世界で一番大切な人』に、私は一番強烈な切なさを感じた
それは、きっと、こういうことなんじゃないかと思う。
楽しさが内包する切なさと、終わりが約束されているから輝く今と
来春の活動停止がなかったとしても、今のこのステージは、この一回限りだということ。
今、ステージの上でキラキラしているメンバーたちは、活動停止がなかったとしても、やがて歳をかさねていく。
目の前の楽しさは、いずれ終わりが約束されている。
そして、そのことを、実は全員が知っている。
今でこそステージで出会え、ブログにもコメントでき、ラジオ番組を聴き、時には握手までしてくれるメンバーたちには、来春の活動停止以降は、もう逢えなくなるかもしれない(そうなる可能性が強いと私は見ている)。
だが、活動停止ということが、あろうがなかろうが、ファンとアイドルの間には、絶対確実に、もう逢えなくなる時がやってくる。
目の前のステージが楽しければ楽しいほど、すばらしければすばらしいほど、その楽しさとすばらしさは、いつか失われる。
繰り返しそして、そのことを、実は全員が知っている。
花は、いつか散る。夢は、そのうち覚める。私たちは老いる。
でも、花は散るから美しい。覚めるからこそ夢の中は甘美だ。老いるからこそ生の輝きを知る。
さらにしかし、美しい花は散る。甘美な夢は覚める。生の輝きを知った者は、やがて去っていく。
千奈美ちゃんが、ニッコニコな笑顔全開でメインとなって、コミカルな振り付けを全力で(しっとり落ち着いた流れからの急な転調で)踊り歌うメンバーたち。
『世界で一番大切な人』が今般のライブ構成の中で現出した、ぱあっと目の前が明るくなるような視野が広がるような楽しさが、同時に切なさの色を濃くする。
そして思う。
楽しさに現出される切なさの色が濃ければ濃いほど、この一瞬の儚い楽しさを魂に刻んでおこうと。
それでも、自分たちが創り出した歌とダンスのステージに陶然として一体化し、客席を自信に満ちて煽る彼女たちを、ステージに一列に並んで堂々とその両の足で屹立する彼女たちを、今、魂に刻んでおこうと思う。
いずれ、その刻んだ魂もまた消滅するとしても。
自分がキモいことを書いていることは自覚しているから、大丈夫。
*****
活動停止がなかろうとも、いずれやってくる終わりの時。活動停止のお知らせが、このことをちゃんと自覚させたのだとしたら、それはファンへの福音だったのかもしれない。
そう考えると、あえて無期限の活動停止を告知して、それに半年前後の期間をおいてくれたのは、Berryz工房が、ずっと応援してくれたファンに向けて示してくれた、最大限のやさしさだったのかもしれない。
※ 趣旨からそれるが、私は、これがBerryz工房の最後のツアーなのではないかと思っている。2015年の春ツアーは、ない・・・と思っている。
活動停止発表後に開催された、熊井ちゃんのBDイベント、千奈美ちゃんと舞美ちゃんのベリキューイベント、佐紀ちゃんと舞ちゃんのベリキューイベントなどでのメンバーの様子、8月の個別握手会での熊井ちゃんと佐紀ちゃんの印象など、漠然とそういう印象を受けているけれど、根拠はあるようで、実はない。
この予想が外れてくれることを祈っている。
熊本鹿児島のナルチカで新規の若い女の子達が驚くほど増えてた。グループとしてもいろんな可能性があったのになあと思うが、同じ年頃の娘を持つみか身からすれば、刻んだキャリアが正当に評価される世界で生きて欲しいとも思う。彼女らは間違いなくプロ中の中だが、こんな世界に入る人たちじゃあなかったんだろうなあ。
今回のライブは未参戦ですが、この記事見てなかったら自分は切なさだとかまったく感じずにライブを見てるだろう自信がありますw
いつもは泣く分の水分は汗で出てしまってすっからかんだが、今回はちょっとだけ水分とっておこうかなw
おふざけの裏にある真面目さとか、楽しさの裏にある切なさとか
そういうアンビバレントな魅力ってなかなか難しいんだろうね
すべてが一面的で短絡的になった現代日本においてこんなグループが現れたのはある意味奇跡なのかも知れない