℃-ute 横浜アリーナ単独公演『The Future Departure』レポ 「ありがとう」から始まるさらなる一歩

6月11日、℃-uteの10週年を記念するコンサートツアー『9→10(キュート)周年記念℃-uteコンサートツアー2015春~The Future Departure~』の千秋楽が、横浜アリーナにて行なわれた。ツアーの締めくくりとして選ばれた大会場での単独公演の模様を、ゲストライターkogonil氏がレポートする。

いろんなことがあって、みなさん不安に思うことも多いかもしれないけど、私たちはまだまだ走り続けます!

横浜アリーナを℃-ute色に染め切った単独公演の終盤、アンコールのMCでの、リーダーである矢島舞美さんの言葉です。

その世界中から愛される天然で、メンバーからも「あのニッコニコな顔を見ると、笑っちゃって許しちゃうんだよね」と数々のやらかしを暴露され、何かと危ぶまれることも多かったリーダー矢島舞美さんが、その実、メンバーや自分たちのグループだけでなく、ハロプロを取り巻く状況と、その状況に右往左往するファンの不安な気持ちまでも、しっかり見据えていたことを示す見事な発言。
矢島舞美さんが、そのニッコニコな笑顔だけでなく、慈しみ深い母のような心をもった希有のリーダーであることを示して余りある心に届くMC。
℃-ute が、まだまだ走り続けることを高らかに宣言すると同時に、ファンの心にわだかまる無意識の不安も払拭する、簡潔ながら過不足のない完璧なフレーズ。

涙を流しながらではあっても、立派に℃-ute を、いや、team ℃-ute を引っ張る、頼れるリーダー矢島舞美です。危なっかしく天然で、すっかり年下のメンバーに頼ることを覚えたリーダーですが、立派な尊敬すべきリーダーです。

そう。そんな歴史に残る名言まで飛び出した2015年6月11日の横浜アリーナでは、10年の記念日を祝う春ツアー千秋楽の特別公演として、℃-ute の単独ライブが開催されました。

*****

2013年4月3日、池袋サンシャイン噴水前広場で『Crazy 完全な大人』のリリースイベントを行っていた ℃-uteメンバーに、サプライズが仕掛けられた際の様子はハロプロ史上でも屈指の名場面とされます(投稿者は、この場面に臨席できたことを誇りに思っています)。
メンバーたちが「解散?解散?」「誰か卒業するの?」と恐れおののき、つんく♂プロデューサーの音声が「来るトレジャーボックスツアーにて……矢島舞美っ!」と続いた際には、鈴木愛理さんが、一瞬呆然と舞美ちゃんの顔を見つめ、それまでくっついていた身体をそっと離すなど、今から思えば、その一瞬のメンバーたちの葛藤を思うと、なんとも酷なサプライズでもありました。
しかし、それが武道館単独公演決定のお知らせだとわかるや、泣き崩れるメンバーたちから一歩前に出て、同様に泣きながらも、「みなさんを武道館につれていくことができました」と誇らしく宣言していたリーダー。
イベント終わりに高まったテンションのまま「武道館を観に行こう!」と提案し、岡井さんに「リーダーがそうしたいんなら、しょうがない」とニガ笑いされつつ、そのまま夜の武道館にご挨拶したことも、名場面として語り継がれています。

そのサプライズ発表後の2013年春ツアー「トレジャーボックス」の千秋楽は横浜パシフィコ国立大ホール。
パシフィコを埋め尽くすファンの姿(含む投稿者)に、「5年前は埋められなかった」と、舞美ちゃんは泣いていました。5年前は埋められなかった、その会場は、立ち見も含めて立錐の余地もありませんでしたよ。

それから早2年半。
翌年の9月10日も、秋ツアーの千秋楽も、平日の武道館をファンで埋め尽くし、あれほど憬れた武道館をもはや日常として通常運転する℃-ute は、2015年の記念日に、横浜アリーナでの単独ライブに挑みました。

開演まで

2015年6月11日は、予報では雨。
しかし当日はなんとか曇天で持ちこたえる感じで、いつもの℃-uteらしさ(笑)も薄めな感じです(Berryzメンバーが5名来ていたことから、後にその理由も氷解)。

開演まえの小さな幸せ

投稿者が横浜アリーナに到着したのは午後2時前後。
入場列ができるずっと前の時間であるにもかかわらず、横浜アリーナ前の周辺には(毎度のことながら)多くのファンがすでに参集しています。
物販他の所用をひとつずつ片づけるため、うろうろする中、あちこちの現場でよく見るあの顔もちらほらと。
ハローのファンが、ハローの現場に、グループの垣根を越えて集まっている様子には、どうしてそう思うのか自分でも時に不思議に思いながら、ハロプロのDマガなどに見られるような「幸せの風景」が、ファンの間にも染み出てきているような感覚がありますね。ライブ前の、会場周辺の人だかりには、あくまで主観的ながら、とても幸せな風景が見えます。

折り返えされた物販列ですれ違う形で、Berryzのバスツアーで挨拶し有明の喫煙所でもすれ違った梨沙子さん推しの方と、互いに会釈できたことは、開演前のちょっとしたエピソードとなりました。こういうのは…嬉しいですね。
あくまで私の主観ながら、開演前のそこここで繰り広げられる小さな「幸せの風景」が、これから始まる℃-ute の大舞台の大成功を、始まる前から予告してくれているようで(おおげさ?)

Dマガ入手のお薦め

さて、そんな物販では、最新のDマガと、メモリアルなフォトブックをお買い入れ。

メモリアルのフォトブックでは、舞美ちゃんや中島さんがラジオでも繰り返しお話してくれたあれこれが、きちんとしたインタビューとして綴られています。
また最新のDマガでは、5人になるまでをふり返りながら、なつかしのハロプロTime での企画や、もっとなつかしい昔のFC限定DVD企画などを再現してくれています。
イジられる なっきぃ の微妙な表情だったり、ワイプで顔芸すれすれのリアクションを見せてくれる舞美ちゃんだったり、そんな舞美ちゃんの後ろから真面目に(頑なに?)カメラを構える なっきぃ だったり、清楚なたたずまいにも関わらず「足踏んだ、足、足!」と、舞美ちゃんに足を踏まれたことを笑顔で訴える(カメラをかまえているから笑顔かどうかはわからないけれど)愛理さんだったりと、細かいところまで実に小技が効いたリピート必至の仕上がりです。
岡井さん曰く「しーしー女だった舞美ちゃん」など、ほんとに細かいところで、見逃せないあれこれがつまった一本となっております。(詳しくは是非、現品を入手してご確認されんことを)

℃-uteコンサートツアー2015春~The Future Departure~ ℃-ute DVD Magazine vol.55
℃-uteコンサートツアー2015春~The Future Departure~ ℃-ute結成10周年記念フォトブック

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なお、℃-ute 10th Anniversary Book は、グッズの物販ではなく、一般発売のため、グッズ列では購入できず、グッズ入手後、大慌てで新横浜駅前の書店まで走って購入したことを併せてお知らせしてみます。

そして「最後尾はどこやねん!」と、入場列に加わるまでに横浜アリーナを余裕で一周しながら、ようやく入場列に並んで、いよいよ開場です。

オープニングアクトその他

オープニングアクトは、つばきファクトリーとJuice=Juice、そしてツアー帯同組の研修生という3組で。

オープニングアクト3組

つばきファクトリーは『17才』を。
歌割りのあるメンバーが正面を向いて歌っている中、背中を向けて肩を上下させるフリなんですが、これ自分でやってみて(秘密)びっくりしますが、みんな肩甲骨の可動範囲の広いこと!
そして髪をストレートに下ろした新沼希空さんの美少女ぶりたるや。
もう、こうしたツアー帯同であったりオープニングアクトというものが、何を意図して為されるものであるかは重々承知しながら、それでもやっぱりその手に乗ってしまうというか、罠だとわかっているのに敢えて罠に自分から突っ込んでいくというか、自分でも呆れるところがないわけではありませんが、本ステージが始まる前から、すでに目頭を熱くするところがあって、抗えません。

Juice=Juice は、『Wonderful World』を歌ってくれました。
以前、ひなフェスのレポでも書きましたが、高木紗友希さんの独唱がすばらしい。いや、ほんとに。
つばきファクトリーや研修生のパフォーマンスには、初々しさと、慣れぬステージでの懸命さといったものに目頭を熱くするわけですが、この高木紗友希さんの独唱には、アーティストに対するリスペクトとして、目頭を熱くします。
あの高音で透明に透き通った田中れいなのボーカルとも違い、深いバイブレーションで、本気で心を揺さぶりにかかる菅谷梨沙子さんのボーカルとも違い、後述するような低音のノビがすさまじい岡井千聖さんのものとも異なる、実に心地良いボーカルです。鈴木愛理さんに最も近いのではないか…とは、まったくの私見ですが、高木紗友希さんのボーカルは、今後ハロプロ屈指のものに、従って日本の女性ボーカリスト屈指のものになるのではないかと。

ツアー帯同組の研修生は『青春Beatは16』を。
ツアー帯同組の研修生は、山岸理子さん、加賀楓さん、段原瑠々さん、橋本渚さんの4名。
山岸理子さん、つばきファクトリーとしても、ツアー帯同組としても出演で、あんなにふんわりした雰囲気なのに、頑張ってます。

そして最近の恒例行事

オープニングアクトが終わって本ステージが始まるまでの間、公演中の注意事項などがアニメで流される、ちょっとした休憩タイムに、やはりと言うべきか、客席が微妙なざわつきを見せます。

もはや最近のハローのステージでの恒例行事ともなった関係者席にBerryzメンバーを探す一時です。
私の席からは遠くてよく見えなかったのですが(双眼鏡は持たない派)、関係者席に、こぶしファクトリーのメンバーがいたのはわかりました。シルエットではありますが、小川麗奈さんと藤井梨央さんが並んで座っているのがわかりました(後述しますが、こぶしメンバーがこの段階で関係者席にいたことは、ちょっとした驚きです)。
やはりよく見えなかったのですが、そのコミカルな動き(座っているのに、どことなくピョンピョンした感じだったり、緊張したときのお祈りポーズだったり)で、すぐにわかったのが徳永千奈美さん。そのお隣には、髪型と足を組んでいる様子から、おそらく清水佐紀さんがいました。
その2人に話しかけるようにしていたのは「ひょっとして…熊井ちゃん?」とか思いましたが、これは自信ないです。
関係者席の別ブロックには、モーニング娘’15 のみなさんがいたかと思ったら、雅ちゃんと茉麻と思しき人影も(自信なし)。

セトリとステージ

今般の横浜アリーナのステージ構成は、こんな感じです。

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メインステージとセンターステージが、花道だけではなく、客席を一周する回廊でも繋がっている形。この回廊を使って、℃-ute メンバーが、たいへん近い位置まで足を運んでくれました。

回廊をめぐって開場を一周するだけではなく、曲によって、メンバーがところどころ足を止めて、しばらくその場で歌ってくれる演出もありました。私が引き当てた席は、ファミリー席のすぐ後ろのアリーナ席で、公演前半では中島早貴さんが、後半では鈴木愛理さんが、すぐ目の前で歌ってくれて、あまりの輝きに「どうせ止まる心臓なら、今止まれ!」と思ったものです。

後半の鉄板曲では℃-uteメンバーがメインステージで堂々たるパフォーマンスをする一方、研修生ユニフォームに身を包んだ こぶしファクトリー、つばきファクトリーのメンバーが、回廊に散開してダンスを添える演出もあって、私の位置から、井上玲音さんと新沼希空さんが最も近く、こんな幸運で良いのか、なんとなく懺悔したくなったこともお伝えしなくてはなりません。
そう。ここで、こぶしメンバーも研修生としてステージに参加しました。開演前は、関係者席にいたのに。いったい、どの段階で、どんな具合に移動・準備したものか、感嘆せざるを得ません。

さて、今般の横アリ単独公演。秋ツアーである「The Future Departure」の千秋楽という位置づけですが、セットリストは大幅に変更になっています。

1. まっさらブルージーンズ 
2. 即 抱きしめて
3. 大きな愛でもてなして
4. わっきゃない(Z)
5. 桜チラリ
MC:ご挨拶
6. I miss you
7. 悲しき雨降り
8. ほめられ伸び子のテーマ曲
9. 夏DOKIリップスティック:メドレー 舞美ちゃん
10. ディスコ クイーン:メドレー なっきぃ+舞ちゃん
11. 地球からの三重奏:メドレー 舞美ちゃん+愛理+岡井さん
12. 君の戦法:メドレー なっきぃ+岡井さん+舞ちゃん
13. 通学ベクトル:メドレー 愛理
14. One’s LIFE:メドレー 岡井さん+舞ちゃん
15. 江戸の手毬唄II
MC:昔の思い出話
16. 心の叫びを歌にしてみた
17. 世界一HAPPYな女の子
研修生 チャレンジアクト:SHOCK!
18. Flashdanceのテーマ:What a Feeling(Irene Cara)
19. 次の角を曲がれ ( ギター伴奏:LoVendoЯ 魚住有希 宮澤茉凜)
20. 君は自転車 私は電車で帰宅 (ギター伴奏:LoVendoЯ 魚住有希 宮澤茉凜)
21. The Middle Management~女性中間管理職~
22. ひとり占めしたかっただけなのに
MC
23. アダムとイブのジレンマ
24. 悲しきヘブン
25. Midnight Temptation (ギター伴奏:LoVendoЯ 魚住有希 宮澤茉凜)
26. 都会っ子 純情
27. Kiss me 愛してる
MC
28. 僕らの輝き
29. ザ☆トレジャーボックス
30. 超WONDERFUL!
31. Danceでバコーン!
32. たどり着いた女戦士
–アンコール–
33. JUMP
MC ご挨拶:冒頭の舞美ちゃんの一言はここ
34. 我武者LIFE

このセトリで繰り広げられた最高のステージ。そのステージ構成の、そこここでは、10周年の記念日にふさわしく、これまでの歴史を踏まえた、℃-ute のこれまでにあったあれこれを想定した、様々な演出が施されていました。

たとえば『都会っ子 純情』では、舞美ちゃんと舞ちゃんがツインで冒頭と終わりのセリフをやってくれたりと、そこかしこで、これまでの10年をふり返ることができるような演出がほどこされていました。

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最高すぎるステージパフォーマンス

開演早々、2015年の最新曲から逆の順番で、過去のリリース曲のMVダイジェストが流されます。最新の『我武者LIFE』から順番に『即 抱きしめて』までダイジェストが進んだところで、メンバーが登場し、『まっさらブルージーンズ』が奏でられます。
ちょっと最高の演出じゃないですか!

しかも、ここで演じられる『まっさらブルージーンズ』は、2012年の神聖なるVer.ではなく、あの重たいベースの響きも生々しいオリジナルバージョンです。
やってくれたな、と。もう、いきなりの出会い頭の重たいパンチで、初っ端からテンションマックスの横浜アリーナです。
続くインディーズ時代の曲はすべて、神聖なるVer.ではなくオリジナルバージョン。
あの当時のアレンジと曲調で、今の、最高に育ちあがったメンバーが演じるインディーズ時代の楽曲。これは、もう文字ではお伝えできないくらい、最高のパフォーマンスでした。

これが今の℃-ute

セトリのあちこちに「これまでの10年をふり返ることができるような演出」が施されていたと書きました。上述のように『都会っ子 純情』のセリフもそうなら、オープニング早々のオリジナルバージョンによるインディーズ時代の楽曲もそうですし、舞ちゃんがサングラスをしているという登場もそうです。

確かに、℃-ute に限らず、ハロー!プロジェクトの魅力を構成している大きな要素には、<これまでを踏まえて>というものがありますよね。
過去の来歴を踏まえた細かいお約束だったり、メンバーがやり取りするちょっとしたアイコンタクトが「あの時」の「あのこと」を踏まえるからこそのものだったり、大きくは先輩から受け継がれたということから始まって、”これまでのあんなことやこんなことがあって、だからこそ今がある” という定型で語られる物語が、ハロプロの大きな魅力の一部であることは確かです。そして、私も、それが大好きですし、モーニングについてであれ、Berryz工房についてであれ、Dマガであれ、ライブDVDであれ、自分からそうした物語を読み込みに行っては勝手に涙している次第です。
過去、℃-ute について、こちらで公開いただいた投稿は、いずれも、そうした側面に意図的に触れています(こちらとかこちら)。
℃-ute 自身も、ある時はDマガで、ある時はラジオで、ある時は初回限定の特典DVDで、ある時はイベントのMCで、自分たちが順風満帆ではなかったことを強調しています。
冒頭でも書いたように、「5年前は埋まらなかった」とも。

でも、あえて思います。
℃-ute にとっては、そんな定型は、今現在の最高すぎるパフォーマンスにとっての、文字通りの演出にすぎないのではないか、と。あえて、投稿者自身の嗜好というか好みを振り切って、これまでという物語は添え物でしかないのではないかと。

これが今の私たち

開始早々の演出にしても、オリジナルバージョンの楽曲を、今のメンバーで演るところに意味があるのではないか。インディーズ時代から、メジャーデビューの『桜チラリ』まで続けて、こうしてみなさんにお披露目された私たちだけど、今の私たちを見て!と。

今般のセットリストでは、LoVendoЯ から、魚住有希さんと宮澤茉凜さんを迎えて、生ギターでの伴奏も披露されました。で、これは私の推測でしかありませんが、そうした生ギターの演奏を前提にした音調のアレンジがあったのだと思います。楽曲の音響が、やけに低音が強調され、ベースやドラムといったリズムパートがくっきり明確に響いてくる一方で、高音パートが抑え気味な音調アレンジだったように思います。きっと生ギターの伴奏用にアレンジされた調律だったのだろうと。
正しくは、そうした調律と通常の調律を適切に切り替えてステージが進行すべきものと思いますが、生ギターの伴奏がない曲においても、時に高音部分・旋律部分の音響が届いてこない場面がありました(横アリということで通常のホールとは響き方も違っただけかもしれませんが)。
しかし、そんな些細な不調和も、5人の力強いボーカルが吹き飛ばしていました。背景の音響が、あんまりちゃんと届いてこないなと思う場面でも、5人のボーカルは届いてきましたから。

今、ここで、まさに目の前で展開される℃-ute のパフォーマンス、その圧倒的なレベルこそ、今の℃-ute であると。このステージこそが、そのパフォーマンスこそが℃-ute である、と(繰り返し、それを達成するまでの “これまで” が重要であることは言うまでもないながら)。

矢島舞美のひたむきな美しさ

メンバーに慈母のように接するニッコニコな笑顔も大きな魅力ですが、やはりステージでの舞美ちゃんのパフォーマンスは圧巻です。
あの横浜アリーナの広い会場で、メドレー曲とはいえ、たった1人で屹立し、舞踊家かと見まごうばかりのダイナミックなダンスパフォーマンスを繰り広げる舞美ちゃんは、ほんとうに凄かった。
その1人で演じたメドレー曲『夏DOKIリップスティック』も、高音がさらなる高音に続く部分や、急な転調部分にも、声を裏返らせることもなく、いつの間にかボーカリストとしての成長も見せてくれています。『夏DOKIリップスティック』は、過去のツアーでも舞美ちゃんが歌ってくれることはありましたが、今般の横アリの『夏DOKIリップスティック』、繰り返しになりますが、高音のノビが過去最高であったやに思います。

そして開始早々汗だくな様子がスクリーンに抜かれる舞美ちゃんですが、この横アリのスクリーンは、気のせいか、非常に解像度が良いように見え(これ、ほんとに気のせいかな?)汗だくの舞美ちゃんの美しさも過去最高でした。

最高クラスのダンサーと隣の娘さんが同居する中島早貴

横浜アリーナというステージで、あんなにも煌びやかな衣装に身を包んで、どこに出しても恥ずかしくないパフォーマンスを繰り広げながら、MCで愛理さんに「泣くと鼻の頭が真っ赤になる」と言及されるや、隅っこで「およよ」的な「あちゃー」的なリアクションを(ひっそりと)している中島さん。大事な締めのところで、MCを噛んでしまって、でも「大丈夫、気づかれてない」とでも言わんばかりに強引に押し切った中島さん。
こうした細かな部分で、℃-ute の味をしっかり醸してくれています。

もちろんダンスにおいては、清水佐紀さんがアドバイザーに就任し、石田亜佑美さんがまだまだ発展途上である現状においては、ハロプロ屈指の、したがって日本の女性パフォーマー屈指のダンサーでもあり、その体幹のブレなさ具合は半端ないものがあります。
足を開いて胡座をかくかのようにしてストンと腰を落とした状態から、わずかな上体のズレも見せずに、些細な頭の揺れも感じさせずに、スッと直立する、その動作の流れるような美しさたるや。

切れ切れで激しい舞美ちゃんのダンスも、儚げで妖艶な舞ちゃんのダンスも、清楚で落ち着いた愛理さんのダンスも、実は℃-ute メンバーのダンスには、それぞれに味がちゃんとあるのですが、それが「℃-ute はそろっている」と言わしめるのは、基準というか、核として、なっきぃ の正確でハズさないダンスがあるから。なっきぃ のダンスに引っ張られる形で、それぞれのメンバーのダンスが整えられていくから。

ときにリーダーをフォローしてMCの仕切り役を勤めるところも含め、ダンスの基準としても、細かな℃-ute の味を醸してくれるところも、中島早貴さんこそ℃-ute の要なのかもしれないですね。

ボーカリスト:鈴木愛理と岡井千聖

そして、もはや日本を代表する女性ボーカリストと言っても過言ではない愛理さんと岡井さんです。

愛理さんのボーカルは(トークでは、あんなにフガフガしてるのに)、ほんとうに心地良い。
この心地よさは、まったく謎ですね。ハロプロ屈指のボーカルといえば、田中れいなさんや菅谷梨沙子さんが思い浮かびます。れいなのボーカルは、高音がノビまくりで透明で透き通っています。楽曲によっては、れいなのボーカルは最強です。そして梨沙子さんのボーカルは、その深いバイブレーションのおかげか、ほんとうに心が揺れます。
鈴木愛理さんのボーカルは、れいなのように高音域の透明感がすばらしいわけでもなく、梨沙子さんのように身体の奥まで振動が染み込むようなボーカルではないですが、ものすごく安定感があって、高音も低音も、安心して聴いていられる。そのうえ声質が加味されて、聴いていて実に心地良く、声量というよりも、空気の量が違うというか、声が ”続く” んですよね。その「続く」声で旋律をずっと奏でていられる、希代のボーカリストかと。

そして低音のノビが半端ない岡井千聖さん。「低音のノビ」とは言いつつ、一方で、『The Middle Management~女性中間管理職~』など、主旋律にかぶせてメインの歌詞を追っかける追唱部分(「あがる、あがる」とか「かなり あせる」とか「ムカつく感じのメール」とか)は、岡井さんの声質と、自分の旋律を見失わない唱和力と、ボーカルとしての力量が前提になった楽曲とも思え、実に大きな存在感を示しています。
そう、圧倒的な℃-uteのボーカリストとしては、どうしたって鈴木愛理さんの名前が挙がりますが(まったく賛成ですが)、その愛理さんが安心して主旋律だったり高音パートだったりを、伸びやかに自由に歌うことができるのも、副旋律だったり重奏部分を岡井さんに安心して任せていられるから。

今や、鈴木愛理と岡井千聖というハイレベルな二枚看板のボーカリストを擁する℃-ute は、女性ボーカルグループとしても、世界のどこに出しても恥ずかしくないレベルです。まじめに。
おそらくは、マネジメント側でも、それが意識されているのが、セトリに組み込まれた『What a Feeling』です。

そして、その2人の日本有数のボーカリストがガチバトルを繰り広げる『悲しきヘブン』。
主旋律を交互にバトンタッチしながら、朗々と歌いあげる鈴木愛理から、あたかも「ガン飛ばし」のように睨みつけるかのようにして一瞬たりとも目を離さずに、ボーカルでバトルする岡井さんは実にカッコ良い。
過去、私は、最高の『悲しきヘブン』は(曲中の愛理さんの叫びも含め)MVとしても切り取られた2012年版の「℃-ute Cutie Circuit」で披露されたものであると思っておりましたが、今般横アリにおける『悲しきヘブン』は、それを凌駕したかも知れません

最年少にして最妖艶な萩原舞

萩原舞さん、エクステで金髪ロン毛にしてキメキメでしたが、ステージが進むにつれ、前髪が乱れて、長髪部分が顔にかかる場面が何度か。これがいかにも色っぽく、その前髪の背後で、あの大きな瞳で自信満々にニヤっと不敵な笑みを漏らす様子は、「これが、あの舞ちゃんなのか?」と疑うほど妖艶な雰囲気を漂わせていました。

インディーズ時代のサングラスの現品を身につけて登場する予定だったけれど(当時の一番高級なサングラスをお父さんにプレゼントしていたが、今日のためにお父さんから借りてきたとのこと)、片方のレンズが外れてしまって、急遽、マネージャーさんが持っていたもので代用したと報告し、「あー、マネージャーさんが替えの持ってて、よかったーーー」と、相変わらず、しなくて良いぶっちゃけを(そして「ぶっちゃけ」ても1ミリも被害のない暴露話を)してくれる舞ちゃんですし、そんなMCの時も歌っている時も、コロコロとした声質で、どこまでも可愛い舞ちゃんですが、巧みに客席から目線を外す様子など、(パフォーマンスを含めた)そのステージ上でのたたずまいの一切から眼が離せません。

そして繰り出されるキラーチューン

そんな5人が、そんな℃-ute が、あの横浜アリーナを少しも「広い」とは感じさせない迫力のパフォーマンスを繰り広げる今般のステージでは、後半戦に向けて、℃-ute 鉄板のキラーチューンが惜しげもなく披露されます。

たとえば『Kiss me 愛してる』における、なっきぃ の「セイッ!」「カモン!」は、モーニングの『わがまま 気のまま 愛のジョーク』における道重さん+鞘師ちゃんの「セイッ!」「カモン!」がようやく匹敵し得るものです。『わがまま 気のまま 愛のジョーク』が、道重さんと鞘師ちゃんの合わせ技とするなら、1人で、あの道重さんと鞘師ちゃんという2人に拮抗する なっきぃ の煽りは、もはやハロプロ最強でしょう。

そして卑怯ですらある『Midnight Temptation』。この昂ぶりは、すさまじい。ベースのたたみ込みから入る間奏部分は、ほんとに高まります。
高まるといえば、『ザ☆トレジャーボックス』ですよね。今般の横アリでは、メンバーが回廊部分に散って、大きくヘッドバンキングする「どきどきさせるぜトレジャーボックス」の部分、私の席の近くには舞美ちゃんと岡井さんが来ていたのですが、岡井さんの「どきどきさせるぜトレジャーボックス」に合せて頭と上体を大きく上下させる舞美ちゃん、腹筋が注目の舞美ちゃんですが、背中側の筋肉もなかなかです。そして大きなヘッドバンキングの後、岡井さんと目を合わせて微笑む舞美ちゃん、いつも美しいとは思っていますが、舞美ちゃん史上、3本の指に入るくらいの美しさでした(「3本の指」については舞美ちゃんラジオ参照)。

特殊効果も過去最高

そして、その最高のステージは、最高の特殊効果によっても彩られます。
過去の℃-ute のステージでお馴染みだったファイヤー・ボールこそありませんでしたが、レーザー光線あり、花火あり(!)のド派手な特殊効果でした。そして、やっぱり、5人のパフォーマンスは、ド派手な特殊効果に、いっこも負けていませんでしたよ。

ステージの終盤、メインステージからだけではなく、回廊部分のあちこちからも、テープ乱舞の特殊効果が。このテープには、メンバー個々人からの気持ちのこもったメッセージが印刷されていました。
ステージの模様をお知らせする最後に、会場からゲットしてきたテープのキャプチャーをお届けします。萩男と萩子が定番すぎて、かえって涙を誘いますよね。

℃-uteは走り続ける

このように、ごちゃごちゃと書いては来ましたが、とにもかくにも、最高のステージでした。

いろんなことを乗り越えて今があるという定型の物語は、今現在の℃-ute にとっては添え物でしかないのではないかと書きました。今現在のステージに透けて見える背景や来し方など、まるごと吹き飛ばすような圧巻にも程があるくらいの最高のステージである、と。

それでも敢えて、もう一度ひっくり返して。
かつてスタッフ側からも存続を危ぶむ声が出ていた℃-ute(ソースは、なっきぃラジオに橋本氏がゲストで出演した回:「中島早貴のキュートな時間」第170回 2015年4月4日)が、いつの間に、こんなにも最高のステージを見せてくれるようになったのか。

2011年にBerryzとの合同コンサートを経験し、明けて2012年の春ツアー「美しくって ごめんね」の段階では(もちろん、すばらしいとは思っていたけれど、舞ちゃんの変貌に驚きはしたけれど)普通に楽しんでいた℃-ute のツアーが大きく現在へ向けて踏み出したのは、私見では、その2012年の秋から始まった「神聖なるペンタグラム」ツアーからではないかと思っています。
「神聖なるペンタグラム」ツアーは、冒頭にエルガーの『威風堂々』が奏でられてから、本ステージが開始されます。
女戦士たちは、辿り着く前に、「神聖なるペンタグラム」の段階で威風堂々としていた、と。

その2012年には、いったい何があったのでしょう。
おそらく多くの人が挙げるであろうことは、2012年の春にリリースされた『君は自転車 私は電車で帰宅』のヒット祈願として企画された、舞美ちゃんの伝説となった自転車の旅ではないでしょうか。

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美味しそうにオムライスや旅館の朝食を食べる舞美ちゃんだったり、未公開映像として、競輪場を後にしてからお昼に虚ろな感じでお蕎麦を食べる舞美ちゃんだったり、お土産を買い込みすぎる舞美ちゃんだったり、そして、いっしょに旅をしてきたのだからと、雨の中、自転車を抱えて、普通に昇るだけでも厳しい石階段を一歩一歩進んでいく舞美ちゃんだったりと、見る者をして舞美ちゃんを愛さずにはいられない珠玉のDVDとしてリリースされている伝説の自転車の旅ですが(当の舞美ちゃんは、まだそのDVDを見てないらしいですが:ソースは舞美ちゃんのラジオ)。

私は、もうひとつ、おそらく2012年に企画・撮影された、ひとつの特典映像が画期になったのではないかと思っています。
それは、2012年も押し迫ってから発売された「℃-ute神聖なるベストアルバム」の初回限定B盤に収められた約67分にもおよぶメンバーの独白です。
この特典映像は、ちょっと驚くほどシリアスです。

この特典映像の中で、℃-ute は、これまで語られてこなかったトピックを、いやむしろ本来ならばファンに対しては語ってはいけないようなトピックを、語っています。
メンバーの脱退のことも、そしてキッズ出身ではないメンバーが加入し「私たちだけじゃダメってことなの?」と複雑な想いを抱いたことも、自分は℃-ute に必要なのか悩んだことも、リーダーとして肩に力が入りすぎてメンバーに必要以上に厳しくしてしまっていたことも、センターとしての重圧に苦しんだことも、学校でイジメられていたことまでも、あけすけに語られています。
支えてくれた人々やファンへの語りかけで独白は終わるけれど、文字通り、泥と汗と涙にまみれていた姿を、赤裸々に℃-ute メンバーが語っている特典映像です。

この特典映像で、それまで半ばタブーとされたトピックを語って、吐き出した「これまで」に対して客観的に向き合ったことが大きかったのではないかと、私は勝手に思っています。
この特典映像で初めて口にしてから、以降はDマガでもイベントのMCでも、脱退していったメンバーのことを、℃-ute は、あっけらかんと口にするようになりました。

残されたメンバーとしての苦しさを語ったメンバーの脱退を、「私たちだけじゃダメってことなの?」と悩んだという加入してきたメンバーと、その脱退を、それでも自分たちが歩いてきた道として、なんの衒いもなく、今の℃-ute は口に出します。

2015年6月11日の横浜アリーナ公演、ラストのMCでは、鈴木愛理さんが、そのかつてのメンバーのことを話していました。
5人の℃-ute が単独で挑んだ横浜アリーナの会場には、村上愛さんも、有原栞菜さんも、梅田えりかさんも、来てくれていたとのことですね。

*****

℃-ute が2015年最初のツアーの千秋楽として、単独で大舞台に挑んだ横浜アリーナ公演は、現在の最高すぎるパフォーマンスとその凄みを見せつける堂々とした迫力のステージでした。

℃-ute は、大舞台を終えるや、老舗の音楽番組にも出演をひかえ、夏過ぎにはメキシコまで遠征することが予定されています。彼女たちの疾走に、引き離されぬよう、しっかりついて行きたいと思いつつ、リーダー矢島舞美さんの言葉を最後にもう一度。

いろんなことがあって、みなさん不安に思うことも多いかもしれないけど、私たちはまだまだ走り続けます!

(文=kogonil)

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“℃-ute 横浜アリーナ単独公演『The Future Departure』レポ 「ありがとう」から始まるさらなる一歩” への4件のフィードバック

  1. avatar Berryz工房℃-ute より:

    研修生が”SHOCK!“歌っていたけれど

    ℃-uteオリジナルが見たかったが

    何か意図するものがあったのだろうか?

    あと、あまり話題にはなっていないけど

    愛理の「本当に幼なじみって℃-uteメンバーしかいなくて・・・」発言には

    スーパーアイドルの孤独が垣間見えて泣けた

  2. avatar ばくわらVIBES より:

    2013年くらいからのハロDDなので
    Ver違いとか判らなかったけど、解説ありがとう。
    あの組合せにも意図あったんでしょうね。

    左右のスクリーンは4kプロジェクタでしょう。ひなフェスでも使ってました。

    あと、自分はスタンドファミ席でしたが、希空ちゃん、れいちゃんが近かったってことは、わりと近い所でしたね。
    帰路含めてお疲れさまでした。

    • avatar kogonil より:

      おお、プロジェクタが別物だったんですな。
      道理で、メンバーが美しかったわけです。

      >帰路含めてお疲れさまでした。

      帰りは電車がえらいことになってましたね。
      お互い、無事でよかったですね(笑)

  3. avatar しいのき より:

    今ツアーは大宮と横アリのみ参加です。今の魅せるというグループとしてのスタイルが確立したのは2012春「美しくってごめんね」から始まってると個人的には思います。ファイナルではカットされましたがスクリーンとシンクロするパフォーマンスはここから始まってます。

    特殊な企画を一切省いて初期曲からソロ曲、比較的ここ最近の名曲を余すことなくストイックに曲を立て続けにセットリストにしたのは横アリという大箱にやってくる新規客向けにも既存ファンにも納得させるということで練り直されたと思います。

    個人的には同じ事務所内にギターが上手い人がいるのはラッキーでお互いに良い相乗効果が出てました、ただ私がいた場所は左寄りだったのでねぇさんのボリュームがデカかったのでまりんが聞こえにくかったです、中央だったらバランスよく二つのギターのハーモニーが聴けたかと思うと残念です。

    つばきファクトリーが出てたのでバックダンサーとして出てくるのは予想してましたがこぶしまでは予想してませんでした、私の目の前では浜ちゃん、玲音、広瀬さんが煌びやかに踊ってたのが私得でしたw

    今回気づいたのは「悲しきヘブン」パートが若干入れ替わってように思えました、最後の「あーるだーろーうー」が高音をちっさーが担当してたように思えます。

    あとセットが今回の横アリで多少豪華になるかと思いましたが春ツアーから一貫してそのままでした。セットにあまり金かけられない事務所の懐事情(?)もあったのでしょうが幸か不幸かその分メンバーに集中できたという、偶然にも好都合でした。最早魅せるグループとしては日本最高峰のアーチストと言っても過言ではないと断言できます。

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