Berryz工房ラストコンサート 3月3日武道館レポ ”21時半までのシンデレラ”の解けない魔法

アイドルグループ「Berryz工房」が3日、東京・千代田区の日本武道館で「ラストコンサート2015 Berryz工房行くべぇ~!」を開催、11年に渡る活動に区切りをつけた。

当日のステージ上には、大きな西洋のお城を模したセットが組まれていた。まるでどこかの夢の国のようだ。お城の前のメインステージからセンターステージへは、赤い絨毯が敷かれている。今宵、ここに21時までのシンデレラがやってくるのだ。

オープニングアクトでカントリー・ガールズとJuice=Juiceが歌った後、「まもなく開演です」のアナウンスが入ると客席のボルテージは一気に高潮、早くもアンコールの時のように「Berryz行くべ!」のコールが渦巻き始める。
しかし、なかなか出てこない。10分を過ぎても、まだ出てこない。実は、後から明らかになったことだが、舞台裏では本番前にプロデューサーつんく♂からの手紙がメンバーに渡され、感極まってメンバーが涙し、出て来られない状態になっていたのだった。

20分押しで、ようやく幕が上がった。一曲目からBerryz工房の代表曲である『スッペシャルジェネレ~ション』だ。カウントが入り、歴戦のつわもの達が即応して「スッ!」と鬨(とき)の声を上げる! 11年前は細い手足で一生懸命踊り、フォーメーションの移動にも必死だった7人が、今は堂々と武道館のステージを支配し、会場を圧している。そのまま『ROCKエロティック』を披露。男女の衣装分けがされていなくても、男役はカッコ良く、女役はどこまでも可憐に見えるのはさすがの表現力だ。

疾風のように二曲を歌い、Berryz工房は一旦裏にはけていく。巨大モニターには、『Berryz工房行進曲』をBGMに、メンバー達が自然光の中で手作り料理パーティーを開くオープニング映像が流れ、タイトル表示。

Berryz工房ラストコンサート2015 Berryz工房行くべぇ~!

再び登場すると、Berryz工房は全員が揃いの、花柄のワンピースタイプの衣装に身を包んでいた。『付き合ってるのに片思い』などの人気曲を立て続けに3曲歌い上げると、最初のMC。

「まだ今日で終わりの実感がない」と語るメンバーだが、それは会場に居合わせたファンも同じ事。みんなどこかで、今日もいつもと同じただひたすら楽しいだけのBerryz工房のコンサートで終わるのではないか、あと数時間で活動停止という現実を知りつつも、どこかでそんな詮無いことを考えてしまう。

MCの後は、懐かしの『21時までのシンデレラ』が始まった。イントロが流れ始めると、メンバーはお城の尖塔付近の踊り場に移動。衣装の肩に手をかけ、一気に引きはがすと、そこに現れたのは水色のドレスをまとった7人のシンデレラ達だった。今回の衣装やセット、セットリストは、メンバー達の要望が反映されたものだという。
華やかな服を着て歌い踊ることを夢見て、シンデレラ・ストーリーを歩んできた少女たちが、今、大人になって最後の魔法を自分達にかけたのだ。『21時までの~』は、最年少の菅谷が18歳になり、21時以降の芸能活動が可能になってからは封印されていたが、最後の日に、その「魔法の曲」が復活した。

シンデレラ衣装のまま、次の曲は活動停止発表後に発売された楽曲『ロマンスを語って』。幸せな恋愛を夢見る等身大の少女の妄想を歌った、キラキラしたウィンターソングだ。次は『秘密のウ・タ・ヒ・メ』。7人の歌姫が、お城から赤い絨毯を歩んでセンターステージにやってくる。隣の男性ファンが感に堪えない様子で「カッケェ…!」と呟いた。最後の舞踏会の始まりである。

続く『あなたなしでは生きてゆけない(04-13-15完熟Completion Ver.)』のイントロで思わず歓声が上がる。何度聞いても、11年前に発表されたこのデビュー曲の完成度とインパクトは色褪せないものがある。そして、当時は小学生の少女たちの細いボーカルを補うためにかなりの音量で導入されたつんく♂のコーラスが、今や堂々と渡りあってデュエット状態になっている。(いや、それにしても改めてこの曲のつんく♂の声はデカいな…!)
『普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?』で馬のいななきとともにメンバーがステージを去ると、モニターにはBerryz工房の11年間の歩みが映し出される。途中、初2005年に卒業した石村舞波のラストステージの映像も映し出され、場内から拍手があがった。

VTRが終わると、お城の門から何かがチョロチョロと顔を出している。猿か?いや、猿に扮したBerryz工房だ。まさかの『行け 行け モンキーダンス』が、しかも猿の着ぐるみ衣装付きでの披露に、会場は一瞬にして、踊り狂うサラリーモンキー、OLモンキーの群れと化した。

Berryz工房はさらにそのモンキー衣装のまま『 I’m so cool!』『cha cha SING』を披露。こんな衣装でこんな歌をお笑いにならず、クールに歌いこなすことが出来るのもBerryz工房ならでは。

衣装チェンジのため、嗣永・徳永・須藤・熊井らが舞台を去ると、清水・夏焼・菅谷の3人がモンキー衣装のままで繋ぎMCを担当。「こんな衣装で出てきちゃうのウチらくらいだよね」と猿のポーズでおどけてみせた。といってもこの猿の衣装は、当時MVで使われていたようなパーティーグッズレベルの全身タイツではなく、手足が五分丈にカットされ、ふんわりしたシルエットの着ぐるみ衣装になっており、嗣永以外はカチューシャタイプの猿耳(嗣永だけピン止めタイプ、理由はロングホーンが邪魔なためか)を付けており、アイドルの衣装として「可愛い」水準のものにちゃんと昇華されていた。

白いメッシュ地のフレアスカートにハードな黒革のライダースという出で立ちに着替えると、『ジリリ キテル』『なんちゅう恋をやってるぅ YOU KNOW?』『本気ボンバー!!』『世の中薔薇色』と、キラーチューンをたてつづけに投下、観客を煽り続ける。その後『ライバル』を挟んでからの『すっちゃかめっちゃか~』におけるβエンドルフィン放出しまくりの幸福感、続く『一丁目ロック!』のファンの力強いコールの一体感は、「最後にして過去最高」と振り返るファンも多いほど、アイドルの、いやライブパフォーマンスのステージングとしてひとつの到達点がそこにあった。

アンコールとラストMC

アンコールで出てきた7人は『Bye Bye またね』を合唱し、Berryz工房として本当に最後の言葉をファンに向けて一人ずつ語った。

菅谷梨沙子は、12年間を振り返り「色んなことがあって、楽しかったことも嬉しかったこともいっぱいあったんですけど、正直つらかったこともいっぱいあったし、もう全部投げ出してどっか行ってしまいたい、と思ったこともいっぱいありました。」と正直な心情を吐露。2月28日の有明公演から喉の調子が悪く、3月2日には病院に行っていた菅谷は「今日は残念ながらこんな声なんですけど、ここまで精一杯歌えたので後悔はありません」と悔しさをにじませながらも、きっぱりと言い切った。最後まで、菅谷梨沙子らしかった。

熊井友理奈は、自身のトレードマークともなっているフレーズ「ENJOY」の誕生秘話を暴露。11年前、Berryz工房結成当初のアンケートで「好きな言葉」の欄があったが、そこに「楽しむ」と書き込んだ所、当時のマネージャーに勝手に「ENJOY」に書きなおされたとのこと。
しかし「でもこうやって11年間ずーっとエンジョイってしつこく飽きることなく言い続けて本当に良かったと思うし、楽しい時でもエンジョイ、辛い時でもエンジョイしようって思って、みなさんと一緒にここまでたくさん素敵な思い出を作れたんじゃないかな」と、感謝の心を表し、最後は会場全体に呼びかけ「ENJOY三唱」が行われた。

夏焼雅は、「ステージに立って好きな歌を歌って、キラキラした衣装をたくさん着て自分の好きなことばっかり出来る」と思っていた12年前に思いを馳せ、辛いこともたくさんあったが、ファンや相談を聞いてくれるメンバーのお陰でここまで続けてこられた、と振り返った。客席に背を向け、メンバーに向かって「本当にメンバーのみんなが大好きです。いつもこうやって話してると背中を向けてしかメンバーに気持ちを言えないからこうやって目を見てありがとうって最後に言いたかったです。」と涙ながらにメンバーに語りかけた。

須藤茉麻は「なぜハロプロのオーディションを受けたのか聞かれるたびに『私はモーニング娘。さんが大好きで、TVや新聞でオーディションを知って受けようと思いました』って答えてきたんですけど、 本当は嘘で、妹のついでに受けたんです。」と衝撃告白。さらに「当時、辻さんと加護さんの区別もつかないくらい」「アイドルにも興味がありませんでした」と本音をぶちまけると、会場にはどよめきと笑いが広がった。
しかし続けて、メンバーとファンのおかげで「苦手だった歌とダンスもいつしか一番幸せと感じるようになった」と語り、「12年半前の6月30日、あ の日に戻るとしても絶対に同じ道を選ぶと思います。今は、オーディションを受けてよかったと胸を張って言えます」と涙ながらにきっぱりと宣言すると、場内 は大きな拍手に包まれた。

徳永千奈美は、「自分たちで決めた道なんですけど、明日からメンバーとバラバラになると思うと凄く寂しいです。いつも凄いうるさかった楽屋が静かになったりするのかなとか、いつも一緒に見てたDVDとかもこれから一人で見るのかな、って思うととっても寂しいです。」と涙で声をつまらせながら胸の内の寂寥感を絞り出した。しかし、持ち前の笑顔を取り戻し、「この活動停止はこのネガティブな気持ちではなくて
メンバー7人ポジティブな気気持ちで決めた活動停止です。」とし、「明日からはそれぞれ違う道を歩いていきますが明るく楽しく笑顔でその道を突き進んできたい」と語った。

嗣永桃子は、急な活動停止報告について「とことんワガママなグループだなあって思うんですけど、そんなBerryz工房を愛してくれて本当に感謝の気持でいっぱいです」とファンに感謝を伝えた。「ももち自身はまた第二のアイドル人生を歩んでいきますが、これはやっぱりアイドルが大好きだなって思ったから出した結論です」とこれからのアイドル人生への決意を新たにし、その理由は「やっぱりベリーズ工房として活動できて、それでよりアイドルが好きになった」と改めてBerryz工房の存在の大きさを語った。

「皆さん、私達こんなに大きくなりました」と話し始めたキャプテン・清水佐紀は、「キャプテンとして何もできてなかったんじゃないか」と不安に襲われることもあったが、ファンから握手会で「キャプテンはメンバーだけのキャプテンじゃなくて、俺たち私達のキャプテンでもあるんだよ」と伝えられたことにより、11年間の苦労が報われた気がしたというエピソードを紹介。最後に「本当にファンの皆さんのおかげで私達Berryz工房は11年間突っ走ってくることが出来ました。Berryz工房は今日で活動停止になりますが、永久に不滅です。なので、この11年間を、皆さん絶対に忘れないで下さい。この11年間は私の、私達Berryz工房の一生の宝物です。」と宣言する姿は、まさにミスター・Berryz工房だった。

清水の「永久」の言葉から、Berryz工房がラストシングルとしてリリースした『永久の歌』へ。この曲は、ラストソングでありながら、メジャーコードの明るいビート・ロックだ。確かに、湿っぽくなってばかりいてもしょうがない。最後は涙ながらに明るく笑ってお別れを言うのも、Berryz工房の最後らしいかもしれない。

「みなさん、本当にどうもありがとうございました!Berryz工房でした!」

しかし、最後の曲が終わっても、まだ客電も付かなければ終了アナウンスも流れない。ダブルアンコールだ。ラストの曲は、Berryz工房が最後のベスト・アルバムに新録で収録した、正真正銘最後のリリース曲『Love together!』となった。

ダブルアンコールで見せた新境地

忘れないわ今日までの素敵なこの道を
好きよ好き大好き また会えるよね

わがままかなこんな決心
文句一つ言わずに 愛してくれるあなた

時が過ぎ それぞれの道に向かって行く
だからこそこの瞬間 宝物だよ

この曲はファン向けに書き下ろされた最終曲ということもあり、かなり直接的なメッセージとして歌われる解散ソングである。
Berryz工房の楽曲で「ラストコンサートの最後の曲」になるべき資格を持つ曲はいくつもあるが、その中でこの曲になるのは当然予想しうるシナリオとはいえ、ちょっとお涙頂戴的な演出感が出てしまって、一歩引いてしまうのではないか。そんな風に事前には考えていたが、全くの杞憂だった。

気づくと、舞台上にはグランドピアノが設置され、男性ピアニストが曲を演奏し始めた。ピアノ一本の弾き語り、アコースティックバージョンでの披露だったのだ。

だがここで、最後のMCでも喉の不調を訴えていた菅谷の喉が限界を迎える。普段のような、朗々と歌い上げ、時に力任せに張り上げるようなパワーヴォイスを身上としていた菅谷が、嗚咽と喉のかすれで、まともに歌うことが出来ない。

思わず、会場のファンが菅谷のパートを歌い、「りさこ!」のコール(合いの手)を入れ始めると、これがきっかけとなって、アコースティックバージョンながら、コール&合唱付きの『Love together!』となった。ピアノ一本で歌う演出の場合、歓声やコールをすることについては意見の別れるところだろうが、この日の『Love together!』は、まさにBerryz工房とBerryz工房ファン…ベリヲタの「愛がひとつに」なった美しい瞬間だった。

さらに、この時の菅谷は、本人としては不本意だっただろうが、ボーカリストとして新たな境地を見せた。声が張り上げられない代わりに、少しかすれたウィスパーボイスで、魂から絞り出すような、歌に気持ちを完全に乗せきったような、聞くものの心を揺さぶらずにはいられない歌声だった。つんく♂は、この日の菅谷のボーカルを「最後のLove together!のピアノ弾き語りの菅谷の歌はリズムから外れまくってたけど、今までで一番「歌」として心に入ってきました。ニューミュージックの大御所の歌手が歌ってるみたいなね。」と表現している。

人間、最後まで完全燃焼できずに、やり残した感じが残っていると、またそこに挑戦したくなるものである。菅谷は、7人中唯一、活動停止後は休養を表明しているが、今日の気持ちとこの経験があれば、またマイクを手にしてくれる日も来るのではないか、そんな淡い期待も抱かせられた。菅谷としては実に不本意かもしれないが、こう考えると喉の不調も天の采配かもしれない。

涙ながらに歌う菅谷梨沙子

※追記:この『Love together!』は3月5日のハロステで配信されている。『ハロステ』#107

魔法が解ける?

コンサートは18時開演、3時間を予定していたようだが、開演が遅れたハプニングなどで時間が押し、21時半まで行われた。予定通りに終われば「21時までのシンデレラだったね」で綺麗に物語に終幕が訪れたところだが、何をやっても、いつもどこかしら何かが少しだけ規格からはみ出てしまうのがBerryz工房らしいところ。

2004年3月3日、8人の幼い魔女たちが、私たちに解けない魔法をかけた。
11年の時が過ぎ、2015年3月3日の21時を過ぎて、「Berryz工房」は私たちの前から姿を消した。3月4日になり、所属事務所のホームページではメンバーがOGのページに移り、ブログからは「Berryz工房」の名が消えている。それでは、魔法は解けてしまったのだろうか。

Berryz工房は、「解散」という言葉を使わずに、「無期限の活動停止」と言い換えた。これは、彼女達なりの未練であり、ファンへの配慮でもある。しかし、徳永は「始まりがあれば終わりがある」と言ったが、それならば「終わりがあれば始まりがある」とも言えるし、そもそも「停止」では終わっていないではないか。「また会えるよね」と歌って去っていった7人が、いつか再び姿を表してくれることを、私たちはこれからも待ち望んでしまうだろう。

かくして、Berryz工房はファンにガラスの靴を預けたまま、舞踏会場を後にしてしまったのであった。それは呪いにもにて、とても優しくて、同時にひどく残酷で、どこまでも甘美な、決して解けない魔法なのである。

Berryz工房ラストコンサート2015 Berryz工房行くべぇ~! セットリスト

01. スッペシャル ジェネレ~ション
02. ROCKエロティック
オープニングVTR(BGM:Berryz工房行進曲)
03. 愛のスキスキ指数 上昇中
04. 付き合ってるのに片思い
05. 勇気をください!
MC
06. 21時までのシンデレラ
07. ロマンスを語って
08. 秘密のウ・タ・ヒ・メ
09. まっすぐな私
10. あなたなしでは生きてゆけない(04-13-15完熟Completion Ver.)
11. 普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?
VTR:振り返り映像(BGM:桜→入学式)
12. 行け 行け モンキーダンス
13. I’m so cool!
14. cha cha SING
衣装変え時間MC(清水・夏焼・菅谷)→(嗣永・徳永・須藤・熊井)
15. ジリリ キテル
16. なんちゅう恋をやってるぅ YOU KNOW?
17. 本気ボンバー!!
18. 世の中薔薇色 ※煽りMC
19. ライバル
20. すっちゃかめっちゃか~
21. 一丁目ロック!
(アンコール)
22. Bye Bye またね
MC
23. 永久の歌
(ダブルアンコール)
24. Love together!

(文=宮元 望太郎)


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“Berryz工房ラストコンサート 3月3日武道館レポ ”21時半までのシンデレラ”の解けない魔法” への2件のフィードバック

  1. avatar アライブ名無しさん より:

    預けられたガラスの靴にキズをつけるわけにはいきませんね。
    やはり一生ベリヲタは辞められそうもないわw

  2. avatar アライブ名無しさん より:

    俺も一生ベリヲタでいくわwww

    マジで
    ベリーズ最高!!!!

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