【9/11武道館レポ】Berryz工房がファンへ送った熱いエール

2014年9月11日(木)、武道館にて、Berryz工房の2回目となるスッペシャルライブが開催された。
Berryz工房デビュー10周年記念スッペシャルコンサート2014 Thank you ベリキュー!in 日本武道館[後編]と題されたBerryz工房の2回目となる武道館スッペシャルライブだ。

平日であるにもかかわらず、開演前から周辺には多数のファン(含む私)が、あるいは物販に興じ、あるいは開演を待ちかね、武道館に参集していた。
予報では雨だったが、さすが晴れ女ぞろいのBerryz工房とあって、午後に少しパラついた雨も開演が迫るにつれ弱まり、夕刻にはすっかり晴れあがった。前日の9月10日は豪雨に見舞われ(含む私)「さすが舞美ちゃん」とTwitterのトレンドにまでなったことと併せ、いかにもベリキューらしい成り行きに、会場に集まる数千人の脳裏に同じ感慨が浮かんでいることは超能力者ではなくとも容易に見て取れた、そんな武道館前。

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ただよう緊張感

しかし、この9月11日には、それまでのイベントやホールツアー前とは異なった一種独特な緊張感に包まれているように私は感じていた。
言うまでもなく、おそらくはファンだけではなく、当日その場にいた全員の念頭にあったことは、8月2日の中野サンプラザ昼公演にて発表された、2015年春でのBerryz工房無期限活動停止の一件である。

発表後、いくつかのソロイベントやハロコン、握手会などを経つつ、ソロでのフルライブは、この武道館スッペシャルライブが初となる。
活動停止についての言及が、何らかのコメントが、メンバーから出されるのではないか。
事実、前日の℃-uteメインの公演では、一緒にステージに立てる残り少ない機会である旨のコメントが℃-uteメンバーからも出ていたし、アンコール前の℃-ute×Berryz工房の共演曲は「忘れたくない夏」であったし、鈴木愛理さんからは、その選曲についての感動的な(しかしファンとしては最後のところでうかがい知れない)想いを込めたコメントもあった。幕間のインターバルでは「偉大な力を」にのせて、武道館前の夏に行われたベリキューのフランス公演にともなうプライベートでの観光の様子が静止画の連なりで麗しく公開されたりもしていた。

おそらく何らかのコメントがあるだろう。
おそらくそれは「悲しい」とか「切ない」といった言葉では形容しきれない複雑な想いを、会場に集まったすべての人に抱かせるだろう。
そして、メンバーの何人かは涙を見せるだろう。
メンバーに泣かれでもしたら、そんなもん確実にもらう。もらい泣いちゃう。
いや、開演の瞬間に泣くかも知れない。

そのように「泣く気満々」で心の準備を整えつつ、いつもとは違った緊張で、Berryz工房のスッペシャルライブの開演を待っていたのだった、私は。ファンなりの万感の想いを抱えつつ。

Berryzメンバーの涙

そのように泣く気満々であったこと、「万感の想い」などと言っちゃうことには、様々に去来する積み重ねがある。

2013年3月に横浜パシフィコで開催されたひなフェスでは、Berryz工房9周年をお祝いする特別編成の公演で、多くのメンバーが、ファンに、スタッフに、家族に、そしてお互いに感謝し、9周年を迎えられたことに涙を見せていた。自分たちでも、自分たちが涙もろくなったことに意外である旨のコメントを付け加えながら、9年、いろいろあったことを想起しつつ、お互いにアイコンタクトを取りながら、それはそれは美しい涙を見せていた。
2013年の11月に、単独で初の武道館ライブを達成した際も、ここまで来るまでに必ずしも順風ばかりではなかったことをコメントして、多くのメンバーの目には涙があった。そう、本来であればファンに対してはオープンにされることのない感情すら交えて、必ずしも楽しいことばかりではなかったことをふり返りつつも、武道館を埋め尽くすファンが掲げるペンライトによる唯一無二の風景を前に(時に緊張のあまり)、多くのメンバーが宝石のように貴重な涙を見せてくれた。
それらを踏まえ、2014年の3月からの春ツアーでも、その日程中に3月3日の10周年記念日を迎え、MCではやはり多くのメンバーが涙していた。MCでは、なんとか耐えきった熊井ちゃんも、3月3日のみのスッペシャル編成オーラス「Bye Bye またね」では、鼻の頭を真っ赤にしていた(この10周年記念日での涙については、9月11日の武道館にて発売開始されたDVDマガジンVol.39の春ツアー密着でも裏付けられる)。

これらすべてにおいて、10年の道のりを随伴していた多くのファンもまた、メンバーとともに涙していた(含む私)。

もちろんハロプロのステージおいては、とりわけベリキューのステージにおいては、「あんな小さい子だったのに」という親戚の叔父さん目線ではなく、仰ぎ見るほどのアスリートにしてパフォーマーであり、すばらしいものを見せてもらっているという、その衝撃に、何に感動しているのかすらわからないまま、涙が止まらないことが常態であるわけだが、9周年を迎えたあたりからのBerryz工房は、自分たちの来し方を踏まえ、かくある自分を自分で選んできたことへの感慨を込めた、一時の感情の昂ぶりに留まらない涙が多かったようにも思う。

こうした場面で、それでも、メンバーの徳永千奈美ちゃんと、ももちこと嗣永桃子さんが涙を見せることはなかった。どちらも(奇しくも「ビジネス」不仲を演じ続ける二人でもある)、いつものペースを崩さず、ファンが想定するであろうキャラを外さず、他のメンバーをやさしく微笑みながら見つめることはあっても、決して泣くことはなかった。(ライブのDVDで確認して欲しい。傍若無人で自由気ままキャラである千奈美ちゃんが、MCで泣いちゃってる他のメンバーをやさしく見つめ、静かに湛えている微笑みの美しさを:閑話休題)

その二人が、8月2日の活動停止発表では、これまでの前例を大きく覆して、ファンの前で、ステージ上で、憚ることなく、涙を流していた。
千奈美ちゃんは、トレードマークの笑顔を消して、静かに、しかし、大量に流れ落ちる涙が頬を伝わるにまかせていた。ももち は、そんな千奈美ちゃんの姿に、我慢しきれず、嗚咽を漏らした。

どんな場面でも、客前であることを踏まえ、キャラを守り、決してファンには涙を見せなかった二人が、8月2日の活動停止の発表では、誰よりも大きく泣いていた。

活動停止の衝撃

それだけではない。

ベリキューの躍進といえば、2012年から2013年の℃-uteに、Berryz工房は一歩先を越されてしまったことは否定できない。
ハロープロジェクトキッズとして同期でありながら、先にデビューを決めたBerryz工房に対して、ずっと後塵を拝してきた℃-ute。メンバーの脱退とメンバーカラー変更など激動を経て、一時は存続すら危ぶまれた時期すらあった℃-ute。しかし、2011年下半期より徐々に(実力で)動員数を増やし、2012年から2013年にかけての「神聖なるペンタグラム」ツアーでは圧倒的完成度のステージを見せつけ、一足先に武道館単独公演を射止め(しかも2Days)、どうしたって<℃-uteはキてるね!>ということは否定しきれなかった。

そうした状況を横目に、ついに眠れる獅子が目覚めたとも言われ、本気宣言のBerryz工房の、2013年下半期からのステージングは鬼気迫っているようですらあった。(このあたりの事情は、「Berryz工房 スッペシャル ベスト Vol.2」の初回限定版に収録されたスッペシャル・インタビューによっても確認できる)。
℃-uteの躍進に焦りを見せ、キャプテン佐紀ちゃん自ら宣言した2013年の武道館もそうなら、引き続く2014年の春ツアーは、そうでなくとも楽しすぎて常にニッコニコしていることから翌日顔面筋肉痛必至とも言われる、いつものBerryz工房のステージを激しく凌駕する圧巻のステージだった。

この間の事情に併走していたファンの多くは、2014年、ここから本気のBerryz工房の大躍進が始まることを確信していただろう。そんなところへ持ってきての、活動停止発表だったのだ。

2014年9月11日の武道館は、こうした様々な文脈の連なりの上に、嫌が応にも緊張が高まっていたのだった。

そしてBerryz工房のライブは始まった

しかしながら。

そんな、こっちの勝手な盛り上がりをよそに、武道館で繰り広げられたBerryz工房のライブは、徹頭徹尾、Berryzらしい、楽しすぎて、嬉しすぎて、カラッと明るい、どこまでも自由なステージだった。

幕間のインターバルVTRこそ、「ガールズタイムス」をBGMとした幼い頃のベリキュー12人の懐かしい写真が、時にモノクロで放映され、それは長くキッズたちと併走してきたファンの涙を誘うものであったけれども、Berryz工房のライブそのものは、あくまでもBerryz工房の明るく楽しい自由なステージだった。

登場後の一曲目を終えるやいなや、いきなりテンション高く「楽しすぎる!みんな最高!!」と、とびっきりの笑顔の夏焼雅さん(テンション高めの時の雅ちゃんは、ほんとに可愛いし、いつもの輝きの100倍くらい華やか)。
こまかくステップを踏みつつ、身体のいろんなところを、いろんな具合に、様々に、細かく動かす高いステージ技術をさりげなく披露しつつ、時に集まってくれたファンに向って、時にお互いに向って、キラキラする笑顔を振りまきながら、縦横に武道館のステージを駆け回ってライブが展開する。
黒を基調にしたシックながらカッコ良い登場時の衣装をチェンジするや、なんちゃってBボーイ風のラフな衣装で登場するメンバーたちだが、大きめのサングラスをかけた熊井ちゃんの、「どう?こんな私」とでも言わんばかりのノリノリすぎる振る舞い。
舞台中央に設えられた回転するギミックでは、回転に応じて客席側に登場する度にポーズを変えて遊ぶ千奈美ちゃん。ついには、回転する舞台に寝っ転がる梨沙子さんに、その体勢からでもステージに朗々と響き渡る梨沙子さんのボーカルと、翌日の顔面筋肉痛どころか、明日の仕事へ向けた感情チューニングすら難しくなる、あの、楽しい楽しいBerryz工房の「現場」だったのだった。

「ちょっとまて、これ以上楽しく、すばらしいステージなど有り得るのか!」と自問しないではいられなかった昨年の武道館も、今年の春ツアーをも軽々と凌駕して、それでいて、しっかりBerryz工房によるBerryz工房としてのステージだった。

ゲストのモーニング娘。’14も、℃-ute も、もちろん、言うまでもなく、本当にすばらしかったが、それでも、Berryz工房が舞台に出るや、会場全体をBerryzの色に染めてしまう、圧巻の【Berryz】工房ライブだった。

緊張を裏切る明るいステージ

前日の℃-uteメインの武道館では、Berryz工房と℃-uteのコラボとして、「がんばっちゃえ!」と「忘れたくない夏」が選曲されていた。「忘れたくない夏」について上で述べたように、これらコラボは、「さあ泣くぞ」という、こちら側の気持ちの昂ぶりにきちんと対応してくれたものでもあった。

しかし、このBerryzメインの公演では、コラボ曲には「超HAPPY SONG」と「一丁目ロック!」が選曲されていた。
「超HAPPY SONG」については、Berryz工房×℃-uteの【歴史】に欠くべからざる一曲でもあり、楽しく明るい調子の曲でこそ、ベリキューの来し方行く末が脳裏を去来して、かえって泣けるってことはある(ご理解いただけるものと思う)。しかし、「一丁目ロック!」は、どうか? 残り少ない一緒のステージにて、同期でもある℃-uteとのコラボ曲において、しかも「Thank you ベリキュー!」と題された2Daysのコラボ公演において、選曲されたのが数あるBerryzの盛り上がり曲の中でも筆頭に挙げられる「一丁目ロック!」であるとは!

そして最後のMCである。

こっちの事前の緊張がなんだったのかと思えるほど(ま、何だったのかといえば、完全に空回りの自作自演なわけですけども)。誰も泣きやしねえ。

ネットなどの情報を総合するに、キャプテン佐紀ちゃんのMC中、一瞬だけ雅ちゃんがヤバかったらしくスクリーンを見るふりをして後ろを向く場面があったらしいが、現場ではまったく気付かなかったくらいだ。

そう、最近よく泣くメンバーも、客前では泣かないメンバーも、誰一人涙を見せることなく、それでいて残り少ないことに言及しつつも(千奈美ちゃん)、当日のこのライブが楽しかったこと、℃-uteと一緒にステージを作れて嬉しかったこと、Berryz工房でいてよかったこと(佐紀ちゃん)、集まってくれたファンに感謝することなど、きちんとしたコメントを残して、明るく前向きな笑顔だけを残して、汗でキラッキラした極上の笑顔だけを残して、Berryz工房はステージを終えた。

湿っぽいシーンは一切無かった。笑顔と明るさに充ち満ちた、【あの】明るく自由なBerryz工房だった。どこまでも。

berryzbudoukan

Berryz工房からのエール

これは、活動停止のお知らせを正しく踏まえてのことだと私は思う。

発表の当日こそメンバーも涙したものの、この決定には、その決定にいたる12年間すべての選択も含め、一切の後悔はないのだろう。事務所に冷遇されただの、代理店の現場を知らない戦略変更だの、様々に憶測される根拠のない邪推は、なんら真実を含んでいないのだろう。
自分たちでスタッフも交えて話し合ってきた、というのは本当なのだろう。
活動停止という決定は、ほんとうに、自分たちの人生を、自分たちのこれからを、ステージが終わってなお続く自分たちの日々を、真剣に、きちんと考えた結果なのだろう。

それでも、これまでの道のりを随伴してくれた多くのファンには衝撃が走り、初撃を受け止めた後には、喪失感と悲しみが残されたことは事実だ。
もしかしたら、そのことも、メンバーは認識していたのではないか。

だから、この大方の予想に反して涙をみせなかったことは、徹頭徹尾(高い技術に裏打ちされた)おふざけ交じりの楽しすぎるステージングは、メンバーからのメッセージなのではないか。

泣くな!笑え!楽しめ!】と。

どこまでも明るさと前向きな笑顔に終始した9月11日のBerryz工房の武道館は、笑っていて欲しいという、笑顔で見送って欲しいという、メンバーからのファンへ向けたメッセージだったのではないか。

***

武道館公演からさほど日をおかずに開催された厚木市でのイベントでは、登壇したBerryz工房の出番が終わってからも、会場に参集したファンたちの声援は止まず、イベントそのものを最後まで盛り上げ続け、主催者がBerryz工房とベリヲタたちへの感謝を述べる一幕もあったという。
送られたメンバーからのエールは、正しくファンによって受け止められたと言って良い。

(文=kogonil)

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