ミュージカル『Week End Survivor』 4/1 夜公演レポ 舞台に屹立する須藤茉麻の先輩としての姿

池袋のシアターグリーンで、「こぶしファクトリー」のメンバーと須藤茉麻さんが出演する演劇女子部『Week End Survivor』が、4月5日までの日程で上演されていました。
このお芝居を観に行ってきましたよ。4月1日の夜公演です。

Berryz工房の活動停止以降、メンバーたちのそれぞれの活動は、ファンに向かって公開される限りで、できるだけ追いかけようと思っています。ので、茉麻の舞台を観に行ってきました…という流れなのですが、やっぱり「こぶしファクトリー」のみんなの頑張りや魅力を新たに発見してしまったりして、投稿者はほんとうに困っています。

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見入ってしまった舞台

舞台の様子をレポするのは難しいですよね。
そもそも「舞台」の鑑賞に慣れていないこともありますし(ずっと昔に「夢の遊民社」の舞台にちょっとだけ通ってた:歳がバレますね)、それに、ネタバレNGの度合いが、ライブやDマガとは違うことなんかもあったりして。
お芝居だとストーリーに触れることで、わかっちゃうことによるネタバレ感が、ライブやDマガなんかよりもずっと大きいので、うっかり触れられないですもんね。

だから、非常に説得力がないことを自覚していますが、やっぱり目の当たりに演じられていることには見入ってしまいます。

意外にもしっかりしていた「こぶし」メンバーのあれこれ

ミュージカルの振り付けが意外にもしっかりしていること、ずっと出ずっぱりなのに、ほとんどセリフを噛むこともなく、きちんと抑揚が表現されていて、しっかりお芝居ができていること、登場人物の一人にスポットがあたって、その人物の述懐が中心になる場面では、他のメンバーたちが舞台のあちこちで(少なくとも客席から見て)微動だにせず固まっていること(動くよりも、ずっと難しいと思う)、そして、それほど広くない舞台を立体的に使った演目で、都度、出位置などを過たずに把握していること(客席の後ろから登場する場面もあった)。
演劇をたくさん観ている人にとっては、あたりまえのことかもしれませんが、しっかりお芝居できていて、えらく感心しちゃいました。

イヤな奴っぷりが、なかなか板についていた小川麗奈さんや野村みな美さん。
とりわけ、小川麗奈さんはセリフ回しも上手で、(ネタバレ回避のため、わけわからない記述で申し訳ないけれど)役柄の前半と後半で、きちんとセリフの抑揚が変わっていた点は、見事でした。

そして井上玲音さん、ずっとメガネに三つ編みのスタイルでしたが、舞台中、劇の流れで、この三つ編みを振りほどく場面があって、めっちゃ美少女で驚かされます。
ええ、私は驚きました。

藤井ちゃんと浜ちゃん

舞台を終えたラストには『念には念』を歌ってくれたのですが、この「ねん、ねん、ねんね、ねん、ねん、ねん、ねん」のフリでの、藤井梨央さんと浜浦彩乃さんの腰の落とし方、上体と下半身のバランスの取り方が、すばらしい。

℃-ute 矢島舞美さんへの、ちょっとどうかと思わないではない熱の入れ様だったり、舞美ちゃんの使い残しのあれこれをジップロックで保存しようとするなど、「ふ、藤井ちゃん、それは先輩から受け継いだらアカんやつやで!」とディスプレイの前から助言したくなる藤井梨央さんですが、さすが舞美ちゃん推しなだけあると納得させられる身体能力です。
そういえば、℃-ute のDマガ(Vol.51 「℃-uteの本音」ツアー密着第二弾)でも、廊下で激しい床運動を披露していましたもんね。

その藤井ちゃんの腰の落とし方は、「うむ、優れた身体能力である」という方に比重がありますが、浜ちゃんの腰の落とし方は、美しい方向に比重があります。
いや、これは舞台中からも思っていたことですが、浜ちゃんって、ちっちゃくて細いイメージが強かったんですが、振る舞いがとても美しいです。YouTubeのいろんな動画や「ハロ!ステ」、あるいはハロコンの研修生パートなどで目にしていた浜ちゃんよりも、ずっと美しくて、数年後のハロプロのビジュアルを牽引する中核の一人になるのではないでしょうか。

ハロプロの層の厚さ

総じて、「意外にもしっかりしている」という感想を強く持ちましたが、この「意外にも」みたいなことは、先だって公開いただいたカントリー・ガールズについての投稿や、「ひなフェス」についての投稿のカントリー関連の言及でも、自分で使った覚えがあります。
この投稿者、意識してはいませんでしたが、カントリーやこぶしファクトリーといった新グループを、どうやら、舐めていたようです。申し訳ない。
改めて刮目です。

それにしても、ずっとステージで鍛えられてきた先輩グループを見てきたファンを、先輩グループが成長してきた、そのプロセスに並走してきたファンをして、「ま、今後に期待だね」とか「それなりですな」といった感じではなく、しっかりと演目に引きつけている点、たいしたものだと思います。

よく「ハローのファンはやさしいから」といったことが、メンバーからも聞かれますね。
ステージで、グダグダになってしまったりしても、それでも応援してくれると。どこかのグループの、ラストとなる曲中には「文句一つ言わずに、愛してくれた、あなた」なる歌詞もあります。
でも、私は、ハローのファンがやさしいわけではないと思っています。ほんとうにグダグダになってばかりならば、やがて現場に行かなくなるでしょう。少なくないお金を払って、余裕があるわけではない時間を使って、それでも現場に行くのは、そこで演じられるステージが、やっぱりすばらしいから。ときにグダグダとも思えるような崩れ方をしても、それでも舞台の上で、メンバーたちは立て直すから。同じツアーなのに何度も繰り返し繰り返し現場に行くのは、その都度、前回を上回るステージを見せてくれるから。ハローのステージと、メンバーたちの技量が、やっぱり優れているからこそ、多くのファンが現場に足を運ぶのだと思っています。

やさしいァンに甘やかされている…のではなく、そうではなくて移り気なファンの気持ちを引き止めるだけのステージを、ハロプロは作ってきたのだということ。このファン(含む私)は、メンバーの切磋琢磨と汗と涙が勝ち取ってきたものであるということ。

この考えが当たっているとするなら、結成されたばかりの「こぶしファクトリー」、立派にハロプロの一翼を担いつつあると、しっかり確認できたように思います。

そして茉麻のたたずまい

そして、須藤茉麻さんです。
(狂言回し的な役どころで)ほとんど大きな動きはなく、場面場面で、舞台のあちこちを歩く動きだけなんですが、スーッと背筋が伸びているところ、表情の豊富さ(「あら、ふられたんだ(笑)」というセリフがあって、そうした際の表情が実に自然でした)、声の通り具合、そして滑舌、どれを取っても、さすが長年ステージで鍛えられただけはあると思わせるものがありました。

何より、他の「こぶしファクトリー」のメンバーは、踵のないスポーツタイプの靴をはいて演じていたのですが、茉麻はきっちりヒール。
これで、広くない上に、あちこちに段差がある舞台を、時には角度が急なシアター・グリーンの客席の階段を、足元を全然見ないで、背筋を伸ばしたまま歩き回っていたのには、やっぱり感心させられました。

何度も使い、どこでも使って、やや言葉の価値が下落気味ではありますが、それでも「さすが」と言わざるを得ない茉麻のたたずまいでした。

舞台からは外れますが、劇場限定で販売されていた「こぶしファクトリー」のCDに同梱されていたDVDでは(買っちゃったんですよ、ええ)、舞台に挑むメンバーたちのインタビューの末尾に、舞台の先生と並んでメンバーたちに対峙する形で臨む茉麻の姿が一瞬写っています。

先輩になったBerryz工房

ずっと以前に投稿して公開いただいたこちらの書評でもピックアップしたように、ベリキューのみんなは、「ずっとメンバーの入れ替えとかなかったから、先輩とか、後輩って、わかんなくてさ」と言っています。

昨年発売されたBerryz工房の『スッペシャル ベスト Vol.2』、初回限定盤に同梱されていたDVDに収められた61分にもおよぶメンバーのインタビューでは、「今こそ先輩がほしい。今こそ、いろいろ教えて欲しい」と真剣に、切実に、夏焼雅さんが述べています。

余談ですが、今から思えば、おそらく活動停止の話がメンバーの間で真剣味を増し始めた時期だったとも推測でき、このインタビューでの雅ちゃんの真剣さには、改めて胸に迫るものがあります。

「Berryzは怖いと言われる」と言いながら、同時に、「最近の後輩たちは、先輩に対する態度がすごいよね。私たちには、あんなことはできなかった。もうちょっと怖がって欲しい」みたいなことも、言っています。あちこちで。
そんな具合に、先輩と後輩の関係の持ち方について、ときに矛盾するようなことを言っていながら、たとえば Berryz工房&Juice=Juice DVD MAGAZINE Vol.2 などでは、2013年の下期に行われていたJuice=Juiceとの合同ナルチカのバックステージで、植村あかりちゃんに持ち上げられて喜ぶ雅ちゃんだったり佐紀ちゃんだったり、Juice=Juiceメンバーに囲まれて嬉しそうな梨沙子さんだったりが活写されています。
後輩と一緒になって楽しんでいたのはBerryz工房の方でした。

上に述べてきたケースからは、後輩たちを迎えて、先輩としての立ち位置に戸惑うBerryz工房が見て取れます。そして、結局、自分たちの考える「先輩」を明確にできず、後輩たちにきちんと先輩として向き合えなかったのではないか、とも。

先日の「ひなフェス」では、ハロプロ・アドバイザーに就任した清水佐紀さんと徳永千奈美さんが、これまでのBerryz工房のステージでは見せたことがなかったような真剣な眼差しを舞台に向けていました。同じ「ひなフェス」のステージでは、カントリー・ガールズのプレイング・マネージャーとして、嗣永桃子さんは、「ちゃんと浮いて」いました。
そして、「こぶしファクトリー」のメンバーとの舞台に臨んだ須藤茉麻さんは、さすがのたたずまいを見せつけ、経験の違いを背中で語っています。

今、改めて、それぞれの現場で、今こそ先輩となったBerryz工房のメンバーたちの活躍もまた、ほんとうに心から刮目です。
そう、ハロプロのファンは甘くないのですから。

こう書きながら泣きそうであることは秘密です。

(文=kogonil)

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