まーちゃんの物語(書評:『まーちゃんくどぅーのハロプロ先輩探訪団』)

「Top Yell」で連載されていた企画が単行本化されました。
モーニング娘。’14 の10期メンバー、くどぅー(工藤遙)と まーちゃん(佐藤優樹)がホストとして、ハロプロの先輩たちにインタビューするという体裁の対談企画です。

総じて、「あはは」と声をだして笑うような楽しい企画の一冊であるはずなのですが、うっかり行間を読み始めようものなら涙が止まらない危険な一冊でもあります。
その危険な側面は多々あれど、ここでは、本書『まーちゃんくどぅーのハロプロ先輩探訪団』を、一方のホストであるまーちゃん(佐藤優樹)を中心にして紹介してみます。

それでも捨てきれない、いくつかの大事なこと

本書を、一方のホストであるまーちゃん(佐藤優樹)を中心にして紹介したいと述べたけれど。
本書に詰まっている魅力は、本当に多重で多層的で、それらを切り落としてしまうのは(テキストとしてはテーマを絞った方が良いのはわかった上で)惜しすぎて、ほんまに身を切られるようなので、ほんとうなら、それぞれ長文にしたい誘惑に駆られつつ、ごく簡単にご紹介します。

作ってる側の楽しさが伝わる一冊

各ゲスト事に担当編集者のかんたんなコメントが挿入されています。
これが良い感じにハロプロのメンバーの人となりを伝えてくれていて、ぶっちゃけ、これだけでお腹いっぱいです。特に、ももち(39頁)とか、なっきぃ(201頁)は是非!

また連載を通じて追求される大河企画「まーちゃんが好きな木は何だ?」も、てんやわんや感が、現場の楽しさを、したがってハロプロのメンバーのお仕事っぷりを、間接的に伝えてくれます。

さらに、℃-uteのムック本や道重さんのパーソナルブックみたいな製本を想像していたら、お届けされたときの分厚さに、ちょっとびっくりしますよ。連載時よりも段組もフォントも単行本仕様となっており、読みやすさは随分向上している模様。

くどぅー(工藤遙)の呆れ顔とやさしさ

まーちゃんを中心にしようと決めたので、くどぅーをこういう扱いにしてしまうのは、ほんまに忍びない。

後述するような、まーちゃんのあまりにもあんまりな天真爛漫ぶりというか謎っぷりは、場合によっては読んでるだけで、人によってはイラっとするかも知れない。そんな危うさもまた魅力ではあるんだけど、活字になる企画ということで、謎っぷりが行き過ぎてしまって、ちゃんとした記事にならないのもまた困りますよね。
そこいらあたりを良い案配でフォローしてくれる工藤ちゃんは、この連載の大功労者です。
まーちゃんの謎発言を、その真意を汲み取るようにして通訳してくれるだけじゃなく、時に自分の気持ちに向き合いすぎる(後述)まーちゃんを上手に対談へ向け直してくれたりしています。
以心伝心すぎる通訳っぷりなど、なんだかんだ、工藤ちゃんは、まーちゃんのこと大好きなんだろうな、と。

それから、先輩たちへの遠慮のない切り込み(たとえば熊井ちゃんに直球で身長の話題をふるなど:107頁)も鋭く、「そう、それを聞きたかった」というツボをわりと外してないのが注目です。

やさしい先輩たち

本書に登場する先輩は、真野ちゃんにスマイレージの先輩二人(和田さん、福田さん)とベリキューの12名。単行本化にあたって、フォーメーションダンスの産みの親であるYOSHIKO先生、くどぅーとまーちゃんの加入時のリーダーであったガキさん、そして二人が敬愛する現リーダーで、まもなくの卒業が予定されている(私も信仰している)道重さんと、3編の特別編が加えられています。

実は私が一番涙腺ピンチだったのが、この点。

ベリキューのお姉さんたち、口を揃えて「メンバーの入れ替わりとかないから、先輩、後輩ってのが正直、わからなくてさ」とか言ってますが、工藤ちゃんとまーちゃんという(当時)最年少の後輩たちに、ほんとにやさしく接しています。先にも触れたように、まーちゃんがあまりに謎な受け答えをする中、ときに困っちゃってるところもありますが、一生懸命、話を聴いてくれて、そのうえ、ちゃんと先輩としてお話ししてくれています。・・・いつのまにか、やさしいお姉さんになった。
いつのまにか、ほんとうに素敵な女性になりました。あの、キッズのみんなが。

Berryz工房のみなさんは、まーちゃんに「好きな木は何ですか?」と聴かれ、みんながみんな、「これが梨沙子が言ってたやつか!」と言っています。Berryz工房、なんだかんだ仲良いです(笑)。

目の前でまーちゃんと工藤ちゃんが口げんかを始めてしまい、夏焼さんがすっかり空気になります(80頁あたりから)。番長とか言われる雅ちゃんですが、この空気になる(ならな、しゃーない)雅ちゃんが可愛くてですね♪

あと、なんと℃-uteの舞美ちゃんがツッコミ役をやってるとか、まーちゃんの暴走を前に、暴走キャラがすっかり鳴りをひそめる千奈美ちゃんとか・・・いつの間にか、みんな、すてきなお姉さんになっていましたよ(泣)。
ベリキューのみんなが大人になったことに涙腺をやられる事情については、類比的に、まーちゃんが後輩を迎えて逡巡している様(後述)からご理解いただけるのではないかと。

道重さんの一言

ゲストの特別編で、まもなくの卒業が目前となった道重さゆみさんが登場しています。
「Top Yell」本誌では、一部しか掲載されなかった道重さんゲスト回が、完全収録です。

「好きな木は何ですか?」という定番となったブッコミに対する道重さんの答えがすばらしいの一語に尽きます。
すばらしいと言いつつ、おそらく道重さんとしては、そんなに気負いもなく、上手に返した程度の応答だったのではないかと思いますが、私はこれで涙腺決壊しました。ネタバレになるので書きませんが。

他にも、後述するまーちゃんの逡巡に、道重さんはやさしく「そっかあ・・・」と応じてくれています(294頁)。道重さん・・・ほんとに立派なリーダーになったんですね(泣)。

なんか泣いてばっかりで、申し訳ない。

まーちゃん(佐藤優樹)の呆れた天真爛漫

さて、本書を、一方のホストであるまーちゃん(佐藤優樹)を中心にして紹介したいと述べました。

本書を手にする誰もが注目するであろうこと、まず真っ先に印象に残ることは、一方のホストであるまーちゃんの、あまりにもあんまりな天真爛漫さです。これでも、言葉、選んでます(笑)。

すでに何度か言及している「好きな木は何ですか?」といった、脈絡も意図も謎すぎる質問だけではありません。謎すぎる質問といえば、須藤茉麻さんなど、好きな窓から好きなイスまで聞かれるにおよび(177頁)困惑しきっております。脈絡も意図も謎すぎるのは、質問だけじゃなく、先輩のお話を受けての展開であったり、工藤ちゃんのナイスフォローを受けての立て直しであったりで、改めて発言するそのいちいちが脈絡も意図も謎すぎる(笑)。

話の筋道が見えないだけじゃなく、そもそもの単語の勘違いや間違いも頻発してます。
時には工藤ちゃんも翻訳しきれずお手上げだったりして、対談現場に臨席した人々だけじゃなく、ページを遡って確認できるはずの読者も、話の脈絡がまったく見えずに、とんでもないことになってる場面が頻出します。頻出しすぎとの声も。

でも、工藤ちゃんも先輩たちも、確かに困ってはいるんだけど、決してまーちゃんを嫌がったり(時に柔らかくたしなめることはあっても)無視したりすることはありません。

むしろ、まーちゃんの周囲の人たちが、見えない脈絡を一生懸命見つけてあげようとしている場面すらあります。そのこと自体が微笑ましいのだけれど、きっとそれは、次に述べるような、まーちゃん側の事情といったものを、工藤ちゃんも先輩たちもわかっているからなんじゃないかと思います。

まーちゃんなりの成長と苦悩

本書の元となった連載は2012年に始まっています。ですから、およそ2年にわたって連載されたことになり、その分、連載開始当時はハロプロ最年少だった工藤ちゃんもまーちゃんも、成長しました。

もちろん、屈託なさすぎの天真爛漫すぎる謎応答は、むしろ磨きがかかってるわけですが(笑)、この連載期間中、いろんなことがあって、まーちゃんは少し大人になりました。

読んでいると、天真爛漫すぎる心が、それでも、誰が悪いわけでもない現実のいろんなものにゴツゴツとぶつかって、まーちゃんなりにいろいろ思い悩んでいる様子が伝わってきます。
加入当初は、(外から見れば)空気の読めなさで10期内部に不協和音をもたらしてしまったまーちゃん。みんながなんで自分に怒るのかわからずに、そのことに怒ってしまったまーちゃん。10期同士でケンカもしたし、先生たちに叱られもしました。だんだん「どうやら自分が悪いらしい。それも、自分のこういう物の考え方が悪いらしい」と悟り始めるまーちゃんです。
それでも、そのように悟り始めても、やっぱり納得できなかったり、言いたいことを、自分が言いたいこととは違うように受け止められたりしたら、やっぱり「それは違う」と言いたいまーちゃん(これは、すごく立派です)。でも、自分が言いたいことも、自分が言いたいことが他の人にどんなふうに誤解されているかも、なかなか他人にわかるような言葉にできないでいるまーちゃん。そして、そのことに自分でイラついてしまって、さらに同時に、自分のそうしたイラつきを、ちゃんと自分で言葉にできず、一層ムカムカするまーちゃん。

その内心の不穏な動きは、加入当初の無垢な天真爛漫さがもたらした不協和音とは、また違った独特な不協和音を、まーちゃんの心にもたらしています。

そして、きっと。
きっと、ハロプロの先輩たちは、自分たちの経験から、そんなまーちゃんの悩みを、まーちゃんが悩んでいることを自分で言葉にできないでいることが、わかるのでしょう。具体的な悩みが何かはわからなくても、悩んでいるということは(自分も悩んだからこそ)、わかるのでしょう。

そして工藤ちゃんは、モーニングに加入してからずっと一緒にいるからこそ、まーちゃんのモヤモヤが、単純に不満を溜め込んでいるような性質のものではないことがわかるのでしょう。

だから、脈絡のつかみ難い謎すぎるまーちゃんの応答に、きちんと向き合ってくれるのでしょう。

道重さんの卒業を問われた まーちゃんの逡巡と応答

そう、ちゃんと現実のあれこれを認識しているからこそ、まーちゃんの心には、自分でもちゃんと説明できないモヤモヤが蠢いています。本書の記述を追うと、時にはそれが外に噴出して、やっぱり10期の仲間たちに当たっちゃうこともあると、わかります。

まーちゃん曰く、そんなモヤモヤを、ギューっと小さくしてくれていたのは、たなさたん(田中さん)とみにしげさん(道重さん)でした。
大先輩である田中さんと道重さんが、まーちゃんにやさしく、時にはきびしく、それでも、いつもまーちゃんのことを想って傍にいてくれたから、楽屋から移動するときには、いつも手を握って一緒に歩いてくれたから、10期メンバーとおふざけしているときには、一緒になって遊んでくれたから、まーちゃんは、自分の心のモヤモヤに押しつぶされないでいることができました。

本書の書評からは外れますが、先の2013年秋ツアーの密着Dマガで、次のようなシーンがあります。
楽屋で冷蔵庫で凍らせていたらしき何かのデザートを食べてるまーちゃんに、工藤ちゃんが「ちょっとちょうだい」と言います。まーちゃんは、「これ、まーちゃんのだから、だめ」と意地悪を言います。そんな場面に、横からひょいっと道重さんがやってきて一言、「さゆみにもちょうだい♪」
これに、まーちゃん、めっちゃ困ります。
みにしげさんにはあげたい。でも、みにしげさんにだけあげて、どぅーにあげないわけにはいかない。きっと、こんな脈絡が一瞬でまーちゃんの脳裏を走ったのでしょう。「さゆみにもちょうだい♪」と言い捨てたまま自分用の楽屋に引っ込んだ道重さんを、いったんスルーして、わざわざ工藤ちゃんのところに駆け寄り、ひとくち自分のデザートをあげるまーちゃんでした(場面はそのまま続けて、道重さんにデザートをあげにいき、デザートをスプーンで口移しに道重さんに食べさせてあげた流れのままに、スプーンで道重さんの鼻をなでるというイタズラっ子まーちゃんのシーンへと連続します)。

まーちゃんが、自分でもよく把握できない自分の心のモヤモヤは、田中さんと道重さんが、上手に抑えてくれていました。いや、田中さんと道重さんがいてくれるから、まーちゃんは、自分の心のモヤモヤに支配されないでいることができました。

でも、田中さんは卒業してしまい、道重さんも、もうすぐ卒業してしまいます。
そんな道重さんをゲストに迎えた最後の回で、道重さんの卒業について問われたまーちゃんは、答えに逡巡します。

それは武道館で言いたいのだと(横浜アリーナと間違ってます。ちゃんと工藤ちゃんが訂正してます:笑)。
逡巡したあげく、道重さんがいなくなったら、自分のこの心と、どう向き合っていいのかわからないのだと、道重さんがギューっと小さくしてくれていた自分のモヤモヤに、自分でどう対峙して良いのかわからないのだと、まーちゃんは言います(このまーちゃんの独白に対して、道重さんがいかにもやさしく接している様子は前述のとおり)。

でも、そんな困惑を告白したすぐ後に、まーちゃんは、自分の心と向き合うのは、それはそれで後で考えることにして、今はとにかく道重さんが笑顔で卒業できるようにしたいのだ、と。謎の脈絡に終始するまーちゃんが、道重さんの卒業について抱いている複雑な気持ちを、こんなに率直に、はっきり語っています。

12期を迎えたモーニングとハロプロの今後

まーちゃんは、この連載の後半、11期の小田ちゃんが後輩として加入した件についても何度か話しています。
最後には(その段階ではまだ決まっていない)12期のことも話しています。

まーちゃんは、12期には近づかないで距離をおくんだそうです。
自分のパフォーマンスのスキルが、生活の態度が、きちんとしていないことが後輩にバレるのが嫌なんだそうです。小田ちゃんには、もうバレてるし、むしろお世話してもらってるから、大丈夫なんだそうです。

12期の後輩が入ってきて、自分が年上のお姉さんになっていくことを、怖がっていること。これも今現在、一生懸命、自分で対処しようとしている心のモヤモヤなのでしょうね。

*****

先輩たちが惜しみなく愛をくどぅーとまーちゃんに注いでくれていることが印象深いこの一冊。
きっと、先輩たちが注いでくれた愛が、まーちゃんの器から溢れたとき、12期やスマ3期をはじめ、以降に続く後輩たちの前には、当たり前のように後輩たちをやさしく見つめるまーちゃんがいるのだろうと思います。そのまーちゃんの傍らには、時にハラハラしながら、時に呆れかえりながら、ずっとくどぅーがいるのだろうと思います。

まーちゃんは「いつかニューヨークでコンサートがしたい」(34頁、菅谷さんの回)と言ってますが、それがつい先日、現実のものとなったように。

改めて。この世の中にハロー!プロジェクトがあってくれて、ほんとうに良かったと私は思います。

(文=kogonil)

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“まーちゃんの物語(書評:『まーちゃんくどぅーのハロプロ先輩探訪団』)” への2件のフィードバック

  1. avatar アライブマヤクロさん より:

    Kogonilさんの書評、感動しました!
    モーニング娘。って、ハロプロってホント凄いなと思いました。
    歌を歌い踊りパフォーマンスで世界中の人に元気と喜びを届けていると同時に、
    彼女たちが女性として人として豊かに大きく成長しているんだなと。
    むしろそちらの方が本質なのかな、、
    そのための学校みたいな存在なんだなと。
    マイフェアレディという映画がありました。
    モーニング娘。ハロプロってリアルマイフェアレディなんですよね!!

  2. avatar アライブ名無しさん より:

    素晴らしい書評でした!

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