後輩から愛され慕われることで羽ばたける…ハロプロにおける「卒業」という儀式

まもなく、その存在それ自体が奇跡とも、可愛いという日本語自体が彼女の誕生を待ち焦がれていたとも言われ、その可憐で健気な克己心が世界史の教科書にのっても不思議ではない歴代最強にして史上最高のトップ オブ アイドル、道重さゆみさんが、モーニング娘。人生を終えようとしている。

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繰り返される卒業という儀式

モーニング娘。といえば、常にメンバーが入れ替わり、卒業というイベントを繰り返していることでも知られる。同時に、先輩から後輩へと、スキルだけではない「魂」が継承されていくことでも、特異な位置を占めているグループだ。

その長い歴史の中で、必ずしも順風ばかりではなかった中、逆風に対峙してステージに立つ姿を後輩に示す先輩たち。その背中を見つめ続けて後に続く後輩たち。先輩たちの姿を見続けた後輩たちが、今のハロプロを支え、過去最高とも言われる今のパフォーマンスを造り出している。
と、こう書くだけですでに泣きそうだが、このように、モーニング娘。のメンバー入れ替わりには、先輩からの後輩への継承という図式がフォーカスされることが多い。

間近に迫った生ける伝説、道重さゆみさんの卒業も、同様にして、「みんな、あなたが憧れでした」と歌われ「凛と佇む先輩」であることが感動的にクローズアップされている(※ しかし、ここまで特定のメンバーの卒業とその物語がフィーチャーされたことが、公式な押し出しとして前面に出されたことが、過去あっただろうか。この一事だけでも、道重さんの存在の大きさと、その貢献と献身が、いかにも高く評価されていることがわかる)。

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でも、卒業というイベントには、先輩から後輩へという一方的な方向だけしかないわけではない。

後輩から慕われ、後輩から愛されることによって、羽ばたいていく先輩の後ろ姿が一層輝くということだって、ある。ここでは、そんな側面にスポットを当ててみたい。

新垣里沙さんの幸せなモーニング人生

ガキさんこと新垣里沙さんの場合。

ガキさんのモーニング娘。人生は、必ずしも幸せなものではなかったと思う(ガキさんファンのみなさん、ごめんなさい!)。

モーニング加入前に、子役としての経歴があったガキさんは、加入時のお披露目で、なんと客席からのブーイングによって迎えられた。CM出演歴があったことから、コネによる加入が疑われたのである。
大好きだったモーニング娘。になれて、はじめての舞台で、嬉し恥ずかしながら、ドキドキ緊張して、それでも一生懸命慣れない笑顔を作っていた13歳の女の子に向って、ブーイングが飛び交ったのだ。
(そう思って見れば、9期の鞘師ちゃんや生田会長(生田衣梨奈)、10期の飯窪さんを、暖かく迎えたファンも、10年の間に成熟していたと言えるのかもしれない)

ほどなくして、加入時のあからさまなパッシングこそ鳴りをひそめたが、その後のガキさんのモーニング人生も、必ずしも幸せなものではなかったと思う。

今でこそ、今現在のステージングの基礎を作ったプラチナ期と賞賛されるけれども、ガキさんの在籍期間はその大部分が(外から見れば)低迷期と重なっていた。また、メンバー相互のバランスでも、「目立たない縁の下の力持ち」ポジションにはまり込んでしまったことも否定できない。

プラチナ期当時、歌唱力という点では、当時ハロプロ最強とも目された、田中れいながいた。ダンス・パフォーマンスでは、歴代屈指のダンサーとの評価も高い、亀井絵里がいた。MCの仕切りやキャラ立ちという点では、自身模索しながらであったことが今では明らかにされているが、「口から産まれた」とも自称する道重さゆみがいた。そして歌単独では れいな に、ダンス単体では亀井さんに一歩譲りながら、歌とダンスが一体となってステージ上での存在感と表現力という点で圧倒的な(同時に大事なところで噛むお約束という武器を兼ね備えつつ)、高橋愛がいた。

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実は歌唱力でも、ダンスでも、MCの仕切りトークでも、それぞれ、れいな、亀井さん、道重さんの独走を許さないだけの高いスキルが、ガキさんにはあった。しかし、全方位的に傑出した高橋愛が、他のメンバーから浮いてしまうことで、ステージのパフォーマンスそのもののバランスを崩してしまわないように、常に高橋愛を支え、高橋愛と他メンバーの間を埋める、黒子のようなポジションを(それ自体、希有の高スキルといえる)黙々と勤め上げ、ついに新垣里沙自身が前面に出てスッポトライトを浴びるという機会は、その在籍期間を考えれば、意外なほど少なかった。

ようやく自分が主役になれる舞台である、自分自身の卒業公演さえも、光井愛佳との合同卒業式という巡り合わせになってしまった。

※ トピックの趣旨からそれるが、この際、当の光井愛佳自身が、非常に恐縮し、せっかくの自分の卒業公演だというのに、ガキさんにも、客席を埋めるファンに対しても、「ほんま、すんません」と連発していたことは忘れがたい。
だが、この気持ちは、ハロヲタには、ちゃんと伝わっている。
卒業してソロになってからの、2013年3月の「ひなフェス」において、SATOYAMA公演のソロとして、一人で愛佳が登壇するや、多くのヲタたちは(℃-uteのファンも、Berryzのファンもいただろうに)、一斉に愛佳の在籍時のメンバーカラーである薄紫のペンライトでパシフィコを埋め尽くしたのである:閑話休題

しかし。
そんな幸運な巡り合わせとは言い難いガキさんのモーニング人生は、その卒業間際に、思いも寄らぬところから、不思議な輝きをまとうことになる。それは、エリポン会長(生田衣梨奈)による。

すでに客観的な評価が難しいほど洗脳されているファンの目からしても気恥ずかしいほどに、エリポン会長はガキさんを慕った。
9期メンバーとして加入してきたエリポン会長によって、モーニングの歴史上初めてと言って良いほど、真っ正面から後輩に慕われ、どストレートに愛されて、ステージ上でもDマガ上でも、ガキさんには、よき姐さんとしての願ってもないポジションが与えられることになる。

卒業にあたって、こんどこそ自分自身だけが主人公になれるはずのバスツアーでさえも、エリポン会長はついてきた(許した事務所の英断たるや!)。自分のファンだと思っていたバスツアー参加者さえも、エリポン会長の参加を暖かく迎え入れてしまった。
だが、そのバスツアーのイベントで、ガキさんは、エリポン会長に向けて「私の黄緑、受け継いでくださいね」と語りかけるのである。

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ファンのブーイングに迎えられ、スポットライトを浴びることが少なかった新垣里沙さんのモーニング娘。人生は、最後の最後で、誰も予想しなかった輝きと笑顔に恵まれた。これは、幸せなモーニング人生であったと言えるのではあるまいか。

素直になった田中れいな

れいなこと田中れいなさんの場合。

加入当初からセンターで、エースとして期待された田中れいなのモーニング人生は、スポットライトという点では、おおいに恵まれたと言って良いだろう。
しかし、ときに「わがまま」とも評された誇り高さと納得いかないことには従わない独立独歩さの裏に、女の子らしい素直な部分と、表向きの孤高イメージとの折り合いが付けられずに悩む傷心を、田中れいなは常に抱えていた。

事実、当時のハロプロで屈指とされ、プロデューサーであるつんく♂からも太鼓判を押した高い歌唱力を持ち、そのことを自認もしながら、曲のバランスであったり、時々のさまざまな事情から、必ずしも常にセンターでエースポジションというわけではなかったことを自分で納得するのに苦労していたことは、卒業後にゲスト出演した道重さんのラジオで、れいな自ら語ってすらいる。
自分の希望や自負と、大人の事情とを、自分の中でなかなか折り合いが付けられず、その様子を外から「尖っている」と評価されてしまって傷つく。
ヤンキーとされ、言いたいことを言いたいだけ言うという評価と裏腹に、びっくりするほど素直な内面を抱え、そのギャップに苦しみ続けた田中れいな。

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また、同期で加入した亀井絵里と道重さんは、加入早々、あまりに仲良くなりすぎ、2010年の亀井さんの卒業までは、誰も割り込めないという雰囲気を、ステージ上でもバックステージでも、醸し出しまくっていた。そんな同期の二人と本当は仲良くしたいのに、自分からは入っていけなかったことも、卒業が間近になった段階のツアーでの、道重さんとのMCで吐露してもいる。

本当な悩んでいたれいな。本当はみんなと仲良くしたかったれいな。
でも、悩んでいることを(ときには自分でも)認められず、誰にも助けを求められなかった、その意味では子供だったれいな。
あちこちで断片的に自身で語っているように、そうした葛藤に疲れ、「仕事は仕事で、淡々とやれば良い」と、「テキトーにやっとけば良い」と、達観ともヒネクレともつかぬ心情で、その日をやり過ごすことが続いた時期が、田中れいな にはあったようだ。

そんな れいな が、心から屈託なく笑い、常に楽しそうに笑い、自身でも「えっ?楽しい?これって仕事??」と戸惑い、リーダーの重圧に悩む同期の道重さんを真っ直ぐサポートし、堂々と笑顔でモーニング娘。を去って行ったのは、10期として加入してきた まーちゃん(佐藤優樹)のおかげだったと思っている。

「学校でイジめられたら、れいなに言うとよ」と言い、「口には出さんけど、たなさたんは、ずっと まさきんぐ のことを想っています」とブログに書くほど、いつのまにか(昔から追っかけているファンには驚きとなるほど)良い先輩として、良いお姉さんとして、田中れいな が振る舞えたのは、真っ直ぐに自分のことを慕い懐いてくれた後輩のおかげだったのではないか。

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11期として加入してきた小田ちゃんが、ライブのMCで、やさしい先輩として、田中さんの名を挙げたことがある。
先輩たちに順番に抱きつきにいっていた小田ちゃんは、まーちゃん に促されるままに、後ろから大先輩である田中さんに抱きつきに行ったという。その際、小田ちゃん本人は、田中さんに五月蠅がられるか、驚かれることを覚悟していたらしい。しかし、小田ちゃんに急に抱きつかれた田中さんは「あっ♪れいなのところにも来てくれたんだ♪」と喜んだという。
その田中さんの反応が嬉しくて、田中さんを「やさしい先輩」だと言う小田ちゃんだった。
そんな小田ちゃんのMCを受けて、「・・・だってさ♪」と照れる田中さんに、「そんな れいな、初めて見るわ~~」と驚きを隠せない道重さんという、すばらしすぎる一幕が繰り広げられた。

田中れいなさんが、本来の魅力を十二分に発揮して、十分な手応えと共に、次の自分へと進んで行けたのは、後輩たちにびっくりするほど慕われたことによるのではないか。
後輩たちに慕われることで、複雑な葛藤を抱えていた田中さん自身が成長し、素直に嬉しいときは笑顔を見せられるようになったのではないか。

卒業する先輩の背中を後輩たちが彩るという構図。
後輩たちに慕われることによって、有終の美を、十全な形で飾れる先輩

そして2014年11月26日へ

いよいよ間近に迫ってきた道重さゆみさんの場合はどうだろうか。

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鞘師ちゃんが、そのファンに向ける気持ちと一回限りのファンとの出会いを大切にする道重さんの心構えを、わずかでも自分のものにしようと、道重さんの背中を強い眼差しで見つめていることは周知のことだ。

飯窪さんが太鼓持ちぶりを完遂するであろうことは、大方の予想するところだ。

まーちゃん(佐藤優樹)は、もう泣かないと宣言している。

私は、実は、石田亜佑美さんの動向に注目しているのだ。

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(文=kogonil)

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“後輩から愛され慕われることで羽ばたける…ハロプロにおける「卒業」という儀式” への1件のコメント

  1. avatar yamano より:

    大変興味深く拝読いたしました。

    田中さんと小田ちゃんのシーンは思わずニヤケテしまう名場面だと思います。
    このエピソードのきっかけはまーちゃんであり、小田ちゃんにこの話をするきっかけを与えたのが、グッズを自腹で購入するほど田中さん好きなくどぅーであることに運命めいたものを感じます。

    そして、あの状況で、どんな場面でどんな風に考えて田中さんのことを優しいと思ったかをちゃんと伝えることができる小田ちゃんはすごいなと改めて感心するシーンでもあります。

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