『ハロステ』ソロ歌の録音状況が判明して前回のミスが明らかに /「演歌はズラして歌う」と思ってませんか?

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宮元忘太郎の演歌リズム講座

今回は教材として、八代亜紀『舟歌』を例にあげて説明します。

0:43 灯りはぼんやり灯りゃいい

この部分を8分音符の拍に当てはめるとこうなります。

あか りは ぼん やり とも りゃい ? ?
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

これが楽譜通りの拍ですが、演歌のいわゆる「小節(こぶし)」を効かせた歌い方をするとこうなります。

_ りゃ ? ?
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24

今度は、16分音符で区切りました。最初の8分の区切りだと、「灯おりゃいい」の「お」の部分は7と8の間になって表現できないからです。

この「小節(こぶし)」というのは、文字通り小さい節を増やしているんですね。これが独特の「味わい」を生み出す効果があります。サビ前やサビ終わりなどで多用される傾向があります。

次にわかりやすいところとして、サビ終わりを見てみましょう。

舟歌を

8分音符だとこうですが

?

16分音符にするとこうなります。

ぅ?

つまり、演歌の「小節(こぶし)」というのは、何でもかんでもただズラしたり遅らせたりしているわけではなくて、タメを作ることによって16分の拍を増やし、いわば独自のグルーブを生み出しているわけです。また、リズムだけではなくて、最後の「舟歌を」の「をぉ」のところはタメと同時に音程もフラットさせて、最後の「ぅ?」で元のメロディラインに復帰します。

そうなると、音のMIXに失敗した音声を「演歌調」と批評することがどれほど的はずれなのか分かりますね。

上記の例で言うと、「灯り」の「あ」、「舟歌を」の「ふ」など、小節の入り、つまりアタックがズレることはまずありません。アタックがずれると、単純に失敗したりもたついたりしているように聞こえてしまうからです。(例えば入りをためて「……ぇふぅなうたをぉぅ?」とする歌い方もないわけではないですが、そうするといわゆる「小節のきかせ過ぎ」、くどい、という印象になるでしょう)

それを踏まえて以前のハロモニの田村『そろうた』を聞いてみると、

「き」みのことなど興味ない
「ほ」かの誰と話してたって

の入り(アタック)が完全にズレているし、それが16分のタメよりも小さい幅なので、特に気持ちよくもなんともない、ただズレているだけなので、よく聞いてない人にとっても「なんか気持ち悪い歌い方だなあ」という印象になってしまった、というわけです。
(もしあえて『ぁまのじゃく』に小節を聴かせるとしても、「他の誰と話してた「ぁ」って?」という具合になるでしょう)

小節が視覚的に分かる映像

ここに興味深い映像があります。八代亜紀がテレビの企画で、カラオケマシーンの採点に挑戦したときのものです。

機械の採点は、基本アルゴリズムとしては音程(メロディ)と拍(リズム)にどれだけ正確かによって判定され、外れるごとに減点式で採点される、というのは広く知られている話です。

なので八代亜紀は、ここで機械採点を意識して、なるべく楽譜通りに歌おうとしています(多分)。それでもたまに小節を利かせるところがありますが、そういう箇所は右上のグラフでリズムや音程のガイドから外れていることが視覚的に分かります。(最新のカラオケマシーンが、こうした「小節」のゆらぎを歌の技法としてどの程度感知できるのかは分かりませんが)

(文=宮元 望太郎)

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